安定供給へ「翌々日配送」が必至か
新型コロナウイルスの感染拡大を受け16日、政府は緊急事態宣言を全国に拡大すると決定し、不要不急の外出・移動の自粛が求められている。喫食頻度の増加やウイルスに対する不安感から、スーパーなどの店舗では一部の加工食品などで品薄・品切れが頻発。物流現場ではトラックの手配や出荷作業が煩雑化し、メーカー~得意先への「翌日配送」は“限界点”に達しつつある。食品業界からは、コロナ禍での消費者への安定した供給を維持するために、リードタイムを1日分余裕を持たせた「翌々日配送」の拡大を期待する声が強まっている。
コロナ禍で要員限られ、物流現場が疲弊
新型コロナウイルスの感染拡大により、外出を控える動きが高まり、小売店舗では消費者が一部の加工食品を買い求める動きによって、品薄や品切れが頻繁に起きている。メーカーは対象商品を増産するとともに、物流もフル回転で対応しており、もともと労働力不足を課題として抱える物流現場が疲弊し始めている。
その背景にあるのが要員不足だ。物流センターで働くパートタイマーは主婦層が多いため、学校の長期休校や保育施設の緊急閉鎖の影響で勤務が減っており、少ない人数で作業をこなさなければならない。物流を担当する正社員も「テレワーク」などで出社が制限されるため、対応要員が限られてしまう。
メーカーでは商品の品薄・品切れに対応するため、出荷調整時間が大幅に増加。出荷指示が遅れ、トラックの手配時間は従来以上にタイトになっている。得意先の物流センターでは大量の商品をさばききれず、ドライバーの長時間待機や検品作業が発生。荷受けのキャパシティを超え、当日中に商品を降ろせないケースもある。
食品メーカー関係者は、「外出が最大の感染リスクとされている中、ドライバーの皆さんには高い職業意識で日々配送していただいている。にもかかわらず、『待たされる』『手伝わされる』、『何時間も待った挙句、明日来てと言われる』――。このままではいずれ運んでもらえなくなり、物流は止まってしまう」と危機感を募らせる。
「翌日配送」のオペレーションが破綻?
加工食品の業界では受注日の「翌日配送」が主流だが、新型コロナ禍の物流のひっ迫の緩和に有効とされるのが、「翌々日配送」だ。リードタイムに1日余裕ができるため、メーカーはトラックを確保しやすくなり、トラック運送業者の運行計画が立てやすく、倉庫業者の夕方の作業集中の負荷も軽減されるメリットがある。
「翌々日配送」については大手食品メーカーではすでに取り組みが始まっているが、得意先との交渉が難航し、繁忙期に限定した実施など恒久化にはまだ至っていないケースも多い。しかし、目下の物流のひっ迫で「翌日配送」のオペレーションが破綻し、事実上「翌々日配送」になってしまうケースも出てきているという。
今回の緊急事態宣言を受け、ゴールデンウィーク明けまでの期間の翌々日配送について得意先の了承を得られたメーカーもあるという。食品メーカー関係者は、「『翌々日配送』は、『隔日配送』ではなく、毎日配送する。このひっ迫した状況下で、毎日配送を継続させるには、プラス1日のリードタイムが不可避」と話している。
(2020年4月21日号)