【物流業界】全国通運連盟、新会長に渡邉日通会長が就任
全国通運連盟は9日、都内で通常総会を開催し、川合正矩会長に代わる新会長に渡邉健二氏(日本通運会長)を選出した。総会終了後の懇親会で挨拶に立った渡邉新会長は「当協会の最大の使命はモーダルシフトの促進であり、今後もJR貨物との連携を強化してお客様に選ばれる高品質な輸送サービスを提供していく」と述べた上で、「ただ、会員の多くは通運だけでなく物流事業者としてトラックも運行しており、ドライバー不足などの課題は我々自身の課題にも他ならない。通運連盟とJR貨物の2者だけで物流業界が抱えるすべての課題を改善することは難しく、全体として物流業界を新しい時代にマッチした形に変えていくことが必要だ」と、より広い視野からの取り組みの重要性を指摘した。
総会では、川合会長が冒頭に挨拶し「有効求人倍率がバブル期を超えるなど労働力不足、トラックドライバー不足が深刻化している。また、昨年11月にパリ協定が発効し、さらに厳しい温暖化ガスの削減目標が課される中で、鉄道コンテナ輸送への関心が高まっている。足元の輸送実績では4、5月は好調に推移しており、その傾向が持続するよう期待している」と述べた。
議事では、2016年度の事業報告と決算報告を原案通り承認するとともに、17年度の事業計画・収支予算を報告。今年度は「鉄道コンテナお試し輸送キャンペーン」の助成総額を前年度500万円増の5500万円とし、新規荷主の獲得を進める。また、引き続き31ftなど高規格コンテナ・集配車両への導入助成や輸送障害時のトラック代行輸送への助成を行う。
役員人事では、7年間にわたり会長を務めた川合正矩氏(日本通運相談役)が退任し、渡邉健二・日本通運会長が新会長に就任。副会長には彌永忠・西久大運輸倉庫社長、齋藤充・利用運送振興会会長(日本通運社長)が、常任理事には髙林秀典・八戸通運社長、大和隆人・合通社長がそれぞれ就任した。川合前会長は連盟の顧問に就いた。
議事終了後に国土交通省の重田雅史・物流審議官とJR貨物の田村修二社長が来賓として挨拶。重田氏は「物流の風景が大きく変わり、重要な転換期を迎えている」として、社会の変化として生産労働人口の減少、環境制約、災害などのリスク対応――の3点を指摘。「この3つの課題をクリアするためには生産性やエネルギー効率が高く、リダンダンシーが用意できるサービスが必要になる」としてモーダルシフトの重要性を改めて強調した。
田村氏は「ドライバー不足でモーダルシフトのうねりが現実のものとなっている。しかし、近い将来にはトラックの自動運転や隊列走行が実現し、内航船舶も船腹拡大や省エネ化、増便も進んでいる。鉄道貨物輸送をさらに効率化し、生産性を上げていかないといけないと自己認識している」と述べた。
通運連盟とJR貨物だけでは解決できない課題もある
総会終了後の懇親会で挨拶に立った渡邉新会長は「ドライバー不足、パリ協定の発効、改正物効法の施行など行政措置の拡充によって鉄道コンテナ輸送に強い追い風が吹いているが、ただ追い風を受けるだけでなく、JR貨物との連携強化のもとでお客様に選ばれる高品質な輸送サービスの提供を目指していく。そのために、鉄道コンテナお試しキャンペーンをはじめとする各種事業を展開していく」と今後の活動方針を示した。その上で渡邉新会長は「ただ、当連盟の会員は通運事業に大きく関わっているが、一方で多くの会員が物流事業者としてトラックも運行している。その意味で、ドライバー不足などの課題は我々自身の課題にも他ならず、通運連盟とJR貨物だけで物流業界全体の課題を解決できるわけではない。第一義的にはJR貨物との連携の中でどれだけモーダルシフトを図っていけるかだが、全体としては今後の物流業界をいかに新しい時代にマッチした形に変えていけるかだと考えている」との問題意識を示した。
懇親会には国交省から田中良生国交副大臣ら幹部が出席したほか、自民党の細田博之総務会長、赤澤亮正・国対副委員長ら政治家も多数出席。JR貨物の石田忠正会長が「今期からスタートした新中期経営計画で、株式上場を視野に入れた真の意味での経営自立の道を進んでいきたい」と述べ、常任理事の松井勝臣氏(北海道通運会長)が乾杯の音頭をとって懇談に入った。
(2017年6月15日号)