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【ズームアップ】空スペースによる客貨混載が拡大=JR東日本G

2019.07.04

JR東日本グループで、“未活用経営資源”である鉄道やバス車両の空きスペースなどを利用した客貨混載が活発化している。先月は新幹線を利用して新潟および岩手の鮮魚を東京へ輸送するトライアルが行われるとともに、高速バスで茨城から加工食品などを運ぶ実証事業も開始。こうした客貨混載でドライバー不足や物流の効率化に対応するとともに、輸送のスピード化が朝獲れ農水産物の鮮度維持にも大きく活かされるなど、同事業に期待される効果は大きい。

朝獲れの鮮魚を夕方前には東京へ

先月11日から6日間実施されたのは、新幹線を利用した2種類の鮮魚輸送。新潟県佐渡沖で朝に水揚げされた生の甘エビは、佐渡島から佐渡汽船のジェットフォイルで新潟港へ運ばれ、新潟駅発の上越新幹線で東京駅へ輸送された。同駅から品川駅まではジェイアール東日本物流(JR東日本物流)のトラックで配送した。上越新幹線による鮮魚輸送は、今回が初めてとなった。

また、岩手県宮古市の三陸沿岸で塩水加工した生ウニは、岩手県北バスで盛岡駅に届けられ、東北新幹線で東京駅に輸送。こちらも同様にJR東日本物流が品川駅まで移送した。

商品は事前予約することで品川駅構内の鮮魚店「sakana baccaエキュート品川店」で受け取れるほか、インターネット通販にも対応。新幹線を利用することで、トラックや貨物列車で運ぶよりもリードタイムを大幅に短縮し、鮮度落ちが早く、生で出荷することが難しい海産物を“獲れたてのまま”首都圏へ届けることを可能にした。生産地をその日の朝に出発した海産物は同日16時ごろに店舗に到着。6日間で計93個の甘エビと生ウニが新幹線で届けられたという。

なお、同事業はJR東日本グループでベンチャー企業への出資を行うJR東日本スタートアップとsakana baccaを運営する水産物卸・小売のベンチャー企業フーディソンが、ジェイアール東日本物流(JR東日本物流)とJR東日本リテールネットの協力を得て実現した。

高速バスの活用も加速、今回は茨城から

さらに、6月にはJR東日本水戸支社が茨城県から高速バスのトランクルームを活用した客貨混載物流をスタート。6月24日から7月31日までの約1ヵ月間、JR東日本グループが運営する東京駅エリアの商業施設へ、ジェイアールバス関東の高速バスとJR東日本物流による駅構内物流などで配達する。

商品は茨城県ひたちなか市のサザコーヒー本社からサザコーヒーKITTE丸の内店へ、また、同那珂市の木内酒造酒出配送センターから常陸野ブルーイング・ラボ TokyoStationへ運ばれる。従来は宅配便や自社便で配送していたが、期間中は客貨混載へ切り替える。具体的には、各出荷施設からJRバス関東の水戸支店(茨城県水戸市)持ち込み、同所から高速バスで東京駅まで輸送。東京駅からJR東日本物流による駅構内物流および館内物流業者の手で当該店舗に納品する。

今回の実証事業に合わせて、6月27、28日の2日間には東京駅のイベントスペースで「茨城マルシェ」も開催。木内酒造の生酒・ビールや、らぽっぽなめがたファーマーズヴィレッジの新鮮な朝獲れ野菜といった商品を茨城県から高速バスで運び、販売した。

同事業の物流は、2016年にJR東日本物流、JRバス東北、東北鉄道運輸の3社が立ち上げた「地域活性化物流有限責任事業組合(LLP)」が担当。LLPには昨年4月からJRバス関東とジェイアールバステックの2社も加わっており、今回の実証事業ではJR東日本物流とJRバス関東が実際の運営を担った。LLPではこれまでも、高速バスを利用した青森県から首都圏への加工食品輸送や福島県からのトマト輸送などを実施してきた。JR東日本グループとしても東北新幹線を利用した朝採れ野菜輸送などを行っている。

客貨混載は宅配会社が山間地などのバス路線や鉄道を活用して宅配貨物を運ぶケースが増えているが、鉄道会社の間では、たとえば京王電鉄が高速バスのトランクを利用して産地直送野菜を輸送するなど、長距離輸送インフラを活かした活用方法が広がりを見せつつある。
(2019年7月4日号)


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