日立物流が新中計「LOGISTEED 2021」策定
日立物流(本社・東京都中央区、中谷康夫社長)は24日、2019年度から21年度までの3ヵ年を対象とした新中期経営計画「LOGISTEED 2021」を策定した。コア領域である3PL/スマートロジスティクスを中核に据えながら、事業・業界を超えた協創領域の拡大を図ることで、新たなイノベーションを創出する。最終年度の数値目標では、売上高7200億円(18年度実績比1・6%増)、調整後営業利益360億円(同15・4%増)、営業利益率5・0%(同0・6pt増)の達成を目指す。同日、本社で会見した中谷社長(写真)は「利益率5%の達成にこだわりを持っていく」と強い意欲を示した。
新中計では、IoT、AI、ロボティクス、フィンテック、シェアリングエコノミーといった技術進化や社会変化に加え、デジタル化の進展がサプライチェーンの構造を大きく変化させている状況を「大きなビジネスチャンス」(中谷氏)と捉え、協創パートナーとのオープンプラットフォーム構築を通じて、物流領域を起点/基点としたサプライチェーンを実現していく。具体的には金流・商流・物流・情報流の「4流」を束ねたサプライチェーンソリューションをデザインすることで、ファイナンス機能などを取り込んだビジネスモデルを構築していく。
コア領域の強化では、ポートフォリオ戦略による収益力強化を図る。フォワーディング事業では、前期末に子会社である日新運輸をAITに売却するとともに、AITを持分法化したが、「強い競争力を得るために、一旦外に出してパートナーと組ませることで事業を拡大させ、3PLに貢献できる姿に変えてリターンする。同様の事例を増やしていく」(同)とポートフォリオ戦略の狙いを説明した。
地域戦略では、アフリカ市場への進出に加え、インドへの投資を加速。チェンナイではすでに自社倉庫の建設が決定しており、「期間中にインドでの3PLに本格的に乗り出したい」(同)とした。また、北米と中国ではそれぞれ域内事業での成長を計画しており、北米ではノンオート分野の拡大、中国では内陸部(重慶、成都)や珠海デルタでの事業拡大を図る。
協創戦略では、パートナーを増やすことで競争領域を拡大。日立キャピタルとは決済や貿易金融でタッグを組むことで調達物流領域を拡大させる。中谷社長は「今後も協創パートナーを増やしていくことで、中計期間中に3兆円規模のビジネスエコシステムを形成したい」と述べた。
また、SGホールディングス/佐川急便との協創では、両社の機能が同居する一体型センターの運営に加え、日立物流が今年9月に埼玉県春日部市で稼働させる「ECプラットフォームセンター」でも協業を開始。「ECのデリバリー業務を佐川にお願いすることで協創をさらに広げる。取り組みが全国に広がれば、今後の協創の核となる可能性がある」(同)とした。
投資計画では、期間中に総額1530億円を計画。このうち860億円を戦略投資分とした。
数値目標では、最終年度に売上高7200億円、調整後営業利益で360億円を計画。
18年度実績7088億円と比較して、大きな伸びを見込んでいないが、新規増収500億円、SGHとの協創などで200億円の上積みを見込む一方、売却した日新運輸の減収分170億円や為替差損、ポートフォリオ見直しなどを織り込んでいると説明。また、未確定な部分が多いとしながら、各種施策により新たな成長機会を獲得した場合の売上高目標として8000億円を掲げた。
一方、利益面では、同一労働同一賃金など働き方改革の対応で20~30億円程度のコスト増を見込む一方、VC21活動など生産性向上によるコスト効果が想定以上に進んでいるとして、利益率5%は達成可能だとした。
(2019年5月30日号)