物流センターの人手不足が浮き彫りに
例年に比べ穏やかに見えた年末の繁忙期。しかし、12月の最終週になると状況が一変した。卸・小売の流通系物流センターでは、トラックの荷下ろし完了までに9時間を要する事態が発生。トラックドライバーの過酷な労働環境の裏にある、「倉庫の人手不足」の実態が浮き彫りになった。年末はトラック運賃相場が上昇する中にあって、食品関係の荷主からは、「年末にせっかく高い運賃を支払ってトラックを確保したのに、荷物を下ろせないようでは元も子もない」との声も聞こえてきた。
「ない袖は振れぬ」、物量減以上に要員減
「さすがにもう、ない袖は振れない。『できません』が通じるようになっている。無理に残業させてまではトラックを動かさない」――。12月下旬、あるトラック事業者の経営者はこう話していた。「ない袖は触れぬ」事業環境を考慮して出荷の平準化の取り組みが喚起されたのか、食品関係の荷主からは「今年の年末は静か。以前と違って『突っ込め』的な忙しさは感じられない」という感想も寄せられた。
しかし、12月最終週が近付くと、「物量は明らかに減っている」一方で、荷物の仕分けや積み込み、荷下ろしを行う作業員不足というボトルネックが浮かび上がってきた。「ターミナルや物流センターの要員不足により、路線便の遅配が発生したり、積み降ろしに長時間を要している。昔では考えられない程度の物量で悲鳴が上がっている」(食品を扱う物流関係者)など、物量の減少を人手不足が上回っている状況がうかがえる。
受付から荷物が下りるまでに9時間待ちも
首都圏で卸・小売系の物流センターに納品する酒類・飲料系の荷主は、年末の物流センターでの長時間待機に苦慮する。受付から荷物が下りるまでに9時間かかったケースもあり、関係者は「物流センターで人が足りず、疲弊してしまっている」と打ち明ける。卸・小売の物流センターは物流会社に運営を委託していることもあるが、繁忙期でなくてもギリギリの要員で回し、待機が常態化している施設が存在する。
長時間待たされるため、「エクストラコストを払わなければ、納品のトラックを確保できない」物流センターもあるそう。基本的には、トラックの長時間待機および翌日ドライバーを休ませた場合の費用は発荷主であるメーカーが負担しているのが現状。ただ、この“不条理”なコストを払い続ける限りトラックは確保できるため、「お金を積まれても『あそこには行きません!』と断るトラック事業者が増えてこないと、改善が進まない」との見方もある。
年末は、トラック事業者が高額受注を狙うため「1台」残しておく習慣があり、運賃相場が上がりやすい。しかし、荷主からすると高い運賃を払っても、肝心の荷物を下ろせないようでは、トラックを確保する意味がない。改正標準貨物自動車運送約款により「積み込み、荷下ろしは倉庫側の仕事」という認識が広まりつつあり、物流センターの要員不足が“物流危機”の新たな火種になりそうだ。
(2019年1月15日号)