井本商運が「海コン便」をモーダルシフトの受け皿に
井本商運(本社・神戸市中央区、井本隆之社長)では、国内貨物をターゲットとした内航コンテナ輸送「海コン便」を強化する。BCP(事業継続計画)対策として、荷主は幹線輸送のルート、モードの複線化を進めており、フェリー、RORO船と並ぶ第3の海上輸送の選択肢として内航コンテナ船の活用を提案する。現在、「海コン便」専用のISOコンテナ300~400基運用しているが、高まるモーダルシフトニーズを受け、増強も計画している。
幹線輸送モードのひとつとして採用の動き
同社は1973年の設立以来、内航フィーダー輸送をメインに事業展開しており、九州・瀬戸内の各港と阪神港を接続する「西日本航路」(阪神港ハブ)、北海道・東北・東海・阪神各港と京浜港を接続する「東日本航路」(京浜港ハブ)を2つ柱とした全国輸送ネットワークを構築している。
2015年6月にトレーラにかかる外内貿別許可基準が統一され、国内貨物をISOコンテナに積んでも“フル積載”が可能になり、競争力が高まったことから、ISOコンテナによる国内貨物の海上輸送サービス「海コン便」を事業化。フィーダー貨物に加え、国内貨物(動脈・静脈)のモーダルシフトに積極的に取り組み始めた。
今年は西日本豪雨で山陽線の貨物列車が3ヵ月運休したことから、「海コン便」による京浜港から九州向けの代替輸送が増加。メーカーでは災害時だけでなく平時から「海コン便」を幹線輸送モードのひとつとして採り入れる動きもあり、四日市~広島間でタイヤの輸送も計画されているという。
定時性確保に注力、緊急時には免コンの活用も
海上輸送ではフェリー、RORO船がメジャーだが、内航コンテナ船は航路が限定されないのが強み。井本商運では現在、国内57港(うち不定期港は14港)に寄港し、39の定期航路(週1便以上の定期配船)を開設。運航隻数は28隻で、近年、船舶の大型化を図ってきたが、同時に港の事情に合わせた小型船も充実させている。
一方で、外航船のコンテナフィーダーがメインのため、本船が遅延したり、ターミナルの着さん状況によって定時性が守れないケースが出てきてしまう。井本商運では定時性を確保するため、「海コン便」のスケジュールを毎週更新し、ホームページで公開。国土交通省に、外貿・内貿バースの連続性・一体性を持たせた整備・運用も要望している。
また、「海コン便」の利用のハードルとなるのが貨物の積み下ろしの問題。通常、海コンのドライバーは荷役を行わないため、トラックと比べ使いにくさを感じる荷主もある。貨物自動車標準運送約款の改正による運送と荷役の分離で「工場や倉庫側での荷役が浸透していけば、『海コン便』とトラックとの差はなくなる」(井本社長)と見る。
現在、「海コン便」のコンテナは各種サイズ、仕様をそろえ300~400基体制だが、今後顧客の要望に応じて増やしていく方針。豪雨の際には、船社の協力を得て、免税コンテナの国内転用によりコンテナの提供を受けられたことから、緊急時には「海コン便」で免税コンテナの活用も視野に入れている。
「海コン便」の輸送実績の伸び率は2017年上期比で16%と、フィーダー輸送の6%を上回っている。動脈物流ではメーカーの多ルート、他モード化で内航コンテナ船が注目される一方、リードタイムに余裕のある静脈物流では既に活用が進んでおり、産廃業界への営業活動を強化するとともに、貨物に合わせた専用コンテナの投入も検討する。
(2018年11月29日号)