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【働き方】“連携”で人手不足解決へ=通運連盟が労働力不足シンポジウム

2017.10.12

全国通運連盟(渡邉健二会長)は5日、東京・中央区の時事通信ホールを会場に、「労働力不足に対応した物流のあり方に関するシンポジウム2017」を開催した。物流業界での最重要課題となった労働力不足への対応をテーマに2014年に第1回が開催され、15年に続き、今回が3回目(16年は熊本地震への復旧支援により開催休止)。
日本物流団体連合会(田村修二会長)と鉄道貨物協会(瀬山正理事長)による協賛と国土交通省による支援のもと、200人を超える参加者が集まった。

「生産性向上へ向け、議論を」渡邉会長

冒頭、渡邉会長は、「トラックドライバー不足の深刻化が進んでおり、手待ち時間や手荷役により発生する長時間労働などが原因となり、通運業でも人材確保に苦労している。現在、政府が先頭に立って働き方改革を進めているが、労働環境の改善に向け、われわれの業界も積極的に取り組まなければならない」と提起し、「今回のシンポジウムでは、労働力確保への対応をはじめ、省労働力型の物流のあり方や生産性向上といった切り口から課題解決への方策を検討する。物流の生産性を高め、より良いサービスが行えるように議論していきたい」と挨拶した。

シンポジウムは、講演とパネルディスカッションの2部構成で、1部は「物流業界の労働力不足の現状と課題」について流通経済大学の矢野裕児教授、「物流生産性革命と総合物流施策大綱」について国土交通省の重田雅史物流審議官、「若者の就業意識」をテーマにマイナビHRリサーチ部の栗田卓也部長らが講演を行った。

流経大の矢野教授は「(各種調査により)トラックドライバー不足は長期的な問題であることはまちがいない。現在の物流のあり方を抜本的に見直す必要がある。とりわけ、長距離貨物の輸送ネットワークの構築が重要で、通運業の担う役割は大きい」と指摘した。

国交省の重田物流審議官は「物流は社会的インフラであり、途切れさせてはいけない。そのためにも社会の変化に対応した『強い物流』を構築しなければならない」と述べ、「7月に閣議決定された総合物流施策大綱では、『繋がる』『見える』『支える』『備える』『革命的に変化する』『育てる』といった6つの視点から、強い物流へ向けた方針を示した。このうち『繋がる』の視点では、荷主と事業者が連携することでサプライチェーン全体の効率化を進め、物流が高い生産性を実現する方向性を示した」と強調した。

マイナビの栗田氏は、若年層の仕事への意識を紹介し、入職を促進するとともに定着率を向上させるための職場環境づくりなどについて説明した。
パネルディスカッションには、荷主と事業者からの代表がパネリストとして出席し、矢野教授がコーディネーターを務めた。パネリストは、イオングローバルSCM事業本部SCM統括部統括部長兼運営管理部部長の坪井康彦氏、ライオン執行役員SCM本部長SCM統括部長の平岡真一郎氏、日立物流執行役専務兼取締役の神宮司孝氏、長崎県農林技術開発センター副所長兼研究企画部門長の荒木誠氏、日本通運執行役員の植松満氏、濃飛倉庫運輸通運部長参事の佐々木正造氏の6人。

人手不足は深刻、事業継続も不安に

パネルディスカッションでは、労働力不足について通運事業者の立場から、日通の植松氏が「これまでは、繁忙期でも従業員の融通を工夫することでなんとか対応できていたが、今後は困難が予想される。貨物の積み下ろしでは、手荷役からパレット化が急務だ」と述べ、通運業界が一体となってパレット化を推進する必要を訴えた。

濃飛倉庫運輸の佐々木氏は「鉄道輸送は定時・大量輸送という長所を持ちながら、通運では集配のおよそ6割が手荷役だという弱点がある。手荷役に起因する長時間労働が敬遠され、若手が少ないために当社のドライバーも高齢化が進んでいる」とし、対策として「ドライバーの定年退職年齢の引き上げやアシスタントとのペア運行も始めているが現状のマンパワーでは限界だ。荷役のパレット化や運賃や荷役料金の適正収受を進め、通運業の魅力を高め、ドライバーの確保につなげたい」と語った。

日立物流の神宮司氏は「当社は3PL事業者としての視点から、労働力不足を非常に深刻に受け止めている。このままでは事業継続が不可能になるという認識に立ち、最新技術を導入し省力化・省人化を進めることに舵を切った」と述べ、「『スマートロジスティクス』というコンセプトのもと、省人化を目指し、自動搬送車や無人フォークリフト、自動追従台車などの導入を進めている。自動搬送車の利用により、同じ作業を従来の3分の1の人員で行えるようになった」と動画を交えて説明し、機械化による省人化のメリットを訴えた。

「共同化」推進が効率化を実現する

ライオンの平岡氏は、深刻な人手不足の結果、「物流を強靭化しない限りサプライチェーン(SC)を維持できない事態だ。当社はこれまでも配送曜日指定による平準化やメーカー共同物流の取り組み、モーダルシフトの推進などで危機に対応してきたが、これまでの施策では対処しきれない」と述べ、「物流の労働生産性を上げるため、『一貫パレチゼーション』『12ftコンテナから31ftへの転換など大型化』『同業や異業種との共同輸送』などを推進していく。特に『共同化』には力点を置き、ともに行う仲間を募集している」と呼びかけた。
イオングローバルSCMの坪井氏は「モーダルシフト拡大を進めた結果、08年度では12ftコンテナ換算2400個の規模だったが、16年度では約4万2000個相当と大きく増加した。

現在、東北エリアへの幹線輸送はすべて鉄道利用に切り替えている。中長距離輸送をトラックだけに依存することは安定供給の観点からリスクが高く、トラック、鉄道、船舶をあまく組み合わせることにより安定供給とコストの圧縮が追及できる」と説明。また、「当社が中心となった鉄道輸送研究会の取り組みでは、異業種荷主の共同化が特長だが、今後ますます連携の取り組みが重要になる」と指摘した。

軽量パレットで農産品の手荷役削減を

長崎県農林技術開発センターの荒木氏は、同センターが中心となり、発泡スチロール製の軽量ワンウェイパレットを開発し、実証実験を実施したと説明。「農産品輸送のパレット化の促進を目指し、JA、長崎県、国とのコンソーシアムを組んで軽量パレットによる青果物輸送の研究開発事業を行った。軽量パレットのサイズはT11型と同じで十分な強度もある。木製やプラスチック製よりもはるかに軽量なためトラックへの積載重量に占めるパレット重量を軽減できた」と述べ、今後の普及に向けた啓発を進めていく意欲を語った。

鉄道輸送が抱える3つの大きな課題とは

締めくくりに、荷主からの要望として、ライオンの平岡氏は「物流事業者間での共同・協働によるさらなる効率化を期待している。また、従来の輸送の仕組みを改善する提案を行ってほしい。そのためにも、物流会社がコーディネート役となり、荷主と一緒に問題解決に取り組んでいきたい」と提起した。

イオングローバルSCMの坪井氏は「鉄道輸送を拡大したいが、『ダイヤ』『コスト』『輸送障害』の3つの点で課題があると考えている。われわれ小売業はリードタイムが短い。積込時間の締め切りがなるべく遅く、目的地には早く着く列車が望ましいが、使いやすいダイヤがなかなかない。コストのことでは、長距離輸送では鉄道が相対的に安価だが、中・近距離ではトラックのほうに競争力がある。中距離での利用コストが下がれば、さらに利用者が増えるのではないか」と述べた。また、輸送障害への対応について「事故でタイムリーに行かないのは理解できるものの、輸送障害発生に対し、代替輸送など適切な対応を行うには正確な情報が必要だ。輸送障害発生時の列車の位置情報や復旧予定など必要な情報を荷主に対してもリアルタイムに共有できるようにしてほしい」と要望した。
(2017年10月12日号)


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