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長時間労働抑制へ労基が荷主に直接要請=厚労省

2022.06.21

厚生労働省は14日、トラック運送業の改善基準告示改正を検討する専門委員会の第6回会合を開催した。ドライバーの長時間労働の原因をつくった荷主に対し、労働基準監督署が直接働きかけを行う新制度案を提示した。従来は荷主に対する改善要請ができなかったが、制度を見直す。ドライバーの時間外労働上限規制が強化される「2024年問題」が迫る中、行政による荷主対策がいよいよ本格化してきた。

立ち入り調査による荷主情報を国交省に提供

厚労省が今回示した新制度案は、国交省が所管する荷主勧告制度や、独占禁止法に基づく公正取引委員会の監視強化に続く荷主対策の強化となる。これまで全日本トラック協会(坂本克己会長)は、告示違反の主要因が着荷主からの待機指示であることを再三主張しており、厚労省は要望に応えて制度を見直した格好だ。

新制度案によると、厚労省は改善基準告示に違反したトラック事業者への立ち入り調査を行う際、違反要因につながる指示を行った荷主の情報を収集。それに基づき、当該荷主に対し、労基署が改善に向けた要請を行う。具体的には「長時間の恒常的な荷待ち時間を発生させないよう努めること」と「運送業務の発注担当者に改善基準告示を周知すること」の2点を要請。制度の詳細は今後整備していくが、要請を受けた荷主は労基署に対し、改善への取り組みを報告することが求められることになる。

また、これまでも収集した情報の一部は国交省に提供していたが、新制度では情報提供の範囲を拡大する。国交省は厚労省から得られた荷主情報を踏まえ、貨物自動車運送事業法や既存の荷主勧告制度に基づき、荷主に対して改善に取り組むよう働きかけやすくなる。荷主によっては労基署からの要請だけでなく、国交省からも改善の働きかけを受ける可能性もある。

厚労省も事業者からの「目安箱」を設置

さらに、厚労省HP内にトラック事業者からの情報提供窓口を設置することを決めた。すでに国交省ではトラック事業者からの情報収集のための窓口〝目安箱〟を設置し、法令違反につながる輸送指示を行う荷主などの情報を収集している。厚労省も長時間待機の抑制につなげることに焦点を絞り、同様に〝目安箱〟を設ける。寄せられた情報は労基署が荷主への配慮要請を行う際に活用するだけでなく、国交省に対しても提供。国交省は厚労省からの情報も活用しながら、荷主に改善の働きかけを強めていく。

次回会議でトラックの改正素案を議論

すでにバス、タクシーの改善基準告示改正案は提示されている。トラックではコロナ禍以前と以後の輸送状況の変化を踏まえ、実態調査を2回実施したことから、改正の議論はバス、タクシーよりも遅れた。これまでの議論では、拘束期間や休息時間、運転時間など改善基準告示の各項目について、労使双方の意見の隔たりは大きいままとなっている。厚労省では夏までに改正案をまとめる姿勢を崩しておらず、7月にも開催する次回会議では労使が納得できる改正案を提出する方針。
(2022年6月21日号)


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