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【ズームアップ】物流企業、事業再編など構造改革進む

2021.05.13

宅配便大手3社(ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便)の2020年度の宅配便取扱個数の合計が約45億3000万個にのぼることが分かった。3社の純増個数は約5億個となり、コロナ禍による巣篭り消費の拡大とEC市場の裾野の広がりで、空前の伸び率を記録した。今年度(21年度)もECの拡大基調が続いていることから、宅配便は「50億個時代」への到達も視野に入ってきた。

3社だけで昨年度の全体実績を上回る

国土交通省調べによる19年度の宅配便取扱個数(トラック扱い)は42億9000万個。福山通運や西濃運輸など3社以外のブランド(計21便)を含めた数字だが、20年度は3社だけでその数字を大きく上回っており、最終的には47億~48億個程度まで増える見通し。

ヤマト運輸の「宅急便」の20年度実績は、20億9600万個となり、初めて20億個の大台を超えた。伸び率は16・5%増、個数にして約3億個の増加だった。昨年6月からECに特化した新配送サービス「EAZY」を投入し、置き配など受け取り方法の多様化などを進めたことで需要を取り込んだ。また、小型商品に対応した「ネコポス」の取り扱いも前年比7割増と好調だった。

佐川急便の「飛脚宅配便」の実績は13億4700万個で、前年比7・2%増、個数で約9000万個の増加となった。都内に大型中継機能を持つ「Xフロンティア」を稼働させるなど、取扱個数の増加に対応できるインフラ増強を進めた結果、大きな負担をかけずに順調に取り扱いを伸ばした。

日本郵便の「ゆうパック」は10億9000万個で、前年比11・9%増、個数にして1億1600万個の増加となり、初めて10億個を超えた。個数全体のうち4割強を投函型の「ゆうパケット」が占めており、小型EC商品の配送で強みを発揮した。

今期も増加は継続、ヤマトは2億個増を予想

コロナ禍による巣篭り消費の拡大を続いているほか、コロナを契機にEC市場の裾野が拡大していることから、今年度(21年度)も宅配便の増加基調が継続する見通し。ヤマト運輸は今年度の取扱個数を23億個と予想しており、前年比で約2億個の増加を見込む。佐川急便は「前期並み」と慎重な見方をしているが、周辺からは上振れする可能性を指摘する声が強い。日本郵便は先日、資本業務提携した楽天からの荷物増加が見込まれることから、順調に取り扱いを増やすことになりそう。

仮に20年度の3社合計の個数から3億個増加すると仮定すると、48億3000万個まで増えることになり、3社以外の取り扱いを含めると、50億個を超えることも十分にあり得る。早ければ今期にも〝宅配便50億個時代〟が到来することになりそうだ。

単価はEC荷物の拡大で下落傾向だが…

単価面では、相対的に安価なEC荷物の増加や荷物の小型化などの影響から、下落傾向にある。宅急便(宅急便、宅急便コンパクト、EAZY、ネコポスの4商品)の20年度の平均単価は633円で、前年の676円から43円減となった。また、ネコポスを除いた3商品の単価は704円で、前年から22円減。今年度については4商品で609円、ネコポスを除いた3商品で699円を予想しており、下落傾向が進む見通し。

一方、飛脚宅配便の20年度の単価は644円で、前年から微増だった。今年度も647円と微増を見込んでおり、「EC荷物の割合が増えれば、自然と単価は下がる」(関係者)状況の中で単価水準の維持にこだわる同社の戦略が見えてくる。なお、日本郵便は単価を非公表。
(2021年5月13日号)


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