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【レポート】関心高まるモーダルシフト、その最新動向は?

2019.12.19

ドライバー不足や労務管理問題への対応、環境負荷低減などを目的に、物流業界でモーダルシフトへの関心がますます高まっている。今年10月に決定した、日本物流団体連合会(物流連、渡邉健二会長)主催による「第6回モーダルシフト取り組み優良事業者公表・表彰制度」の受賞3事例から、各社が進めるモーダルシフトの最新動向を見る。

大賞に選出された、キユーソー流通システム(KRS、本社・東京都調布市、西尾秀明社長)とキユーソーティス(同、山田啓史社長)、全国通運(本社・東京都中央区、杉野彰社長)の3社による「食品(常温)の鉄道輸送へのモーダルシフト」では、九州~関東の常温食品輸送をトラックから鉄道へと移行するとともに、31ftコンテナのラウンド輸送を実現することで、往復実車率を96・3%に高めた点が大きな特長だ。

隔日輸送にすることで積載率を向上

KRSなどは2018年2月に、KRS鳥栖(佐賀県鳥栖市)からKRS富士見(埼玉県富士見市)へのトラック輸送を鉄道へ切り替えた。キユーピー鳥栖工場(鳥栖市)で生産された常温商品の在庫移送で、福岡貨物ターミナル駅(福岡タ)~東京貨物ターミナル駅(東京タ)を鉄道輸送することにより、ドライバー労働時間とCO2排出量の削減につながったが、帰り荷がなくコンテナの空回送が課題となっていた。

そこで、コンテナの往復利用に向けた検討を開始。今年5月から、キユーピー中河原工場(東京都府中市)で生産され、KRS東京SLC(同)からKRS鳥栖へ移送する常温商品を、帰り荷として同コンテナで輸送することとした。これにより、往復実車率が大幅に上昇するとともに、ドライバー労働時間は1600時間削減し、CO2排出量も68%の抑制を達成した。

稼働に当たっては、荷主であるキユーピーの協力を得て、従来の週5日運行を週3日の隔日運行へと移行することによりコンテナ積載率を向上。週5日運行では、トラックを満載にするために複数拠点で積み込みを行い、ドライバーの負担も大きかったが、こうした業務の解消にもつながった。KRSの共同物流事業営業本部グループ営業部営業2課の青柳裕之課長は「在庫移動の隔日化でキユーピー側の需給調整も困難になる中、協力をいただき、大変感謝している」と話す。

輸送リードタイムは2日間で、トラック輸送とほぼ変わらない。逆に、鉄道輸送の強みでもある定時運行は倉庫側業務の生産性向上に結びついた。鉄道貨物は、貨物駅への持込時間が決まっているため、出荷側倉庫では事前に荷物をセット組みをしてコンテナへ積み込めるよう準備するとともに、到着便もほぼ予定通りに納品されることから、現場作業の定時性が増した。

反面、列車事故などの輸送障害発生による遅延も懸念されるが、メーカー在庫の倉庫間移送であることもあって、現在のところ大きな問題は生じていないという。昨年の西日本豪雨災害のような大規模な運休も懸案事項のひとつではあるが、情報を共有し、連携して対応していく方針だ。

今後は、東京側のトラック輸送でさらなる改善も見込まれる。今回のラウンド輸送により福岡タ~東京タの空回送は解消されたものの、東京タからのトラック輸送は、KRS富士見でコンテナの商品を降ろした後、一旦、東京タに戻ってから、KRS東京SLCへ商品を引き取りに向かう運用となっており、KRS富士見~東京タ~KRS東京SLCでコンテナ空回送が発生している。
この解消に向けて、KRSグループの運送機能会社キユーソーティスが、全国通運から輸送業務を受託する形で同区間の運行を担当。将来的には、キユーソーティスの車両がKRS富士見からKRS東京SLCへ直接コンテナを移送できるよう、全国通運と調整していく方向にあり、来年初旬をメドに実現を目指す。

19年度のモーダルシフト率30%達成

KRSグループでは、長距離ドライバー不足への対応とドライバーの働き方改革、輸送ネットワークの維持安定を目的に、トレーラ中継輸送「結ぶ輸送」と鉄道・船舶モーダルシフトを推進。中期経営計画(19~21年度)ではモーダルシフト率を40%まで高める計画にあり、19年11月期は当初目標の30%がクリアできたという。

鉄道モーダルシフトは16年から開始して、KRSロゴの常温コンテナ6本、キユーピーロゴの低温コンテナ4本を運用中。キユーソーティスによるコンテナシャシーは関東と関西で各1本を保有する。これまでは関東~関西および九州を中心に鉄道に切り替えてきたが、来年以降は東北地方と関東および関西を結ぶ幹線輸送でも鉄道シフトを検討していく。

さらに、昨年12月からは伊藤ハム米久ホールディングスと、鉄道による低温コンテナのラウンド輸送もスタート。キユーピーグループの冷凍製品をKRS東京SLCからKRS基山営業所(佐賀県基山町)へ輸送したコンテナの帰り荷に、伊藤ハムウエスト九州工場の商品を積むことで、往復実車率を97%に高めた。現在は、週3便のうち2便が伊藤ハムの輸送に利用されており、残る1便についても他メーカーとの共同運行を含めて実車化を検討していく。

船舶輸送でもキユーピーとライオン、日本パレットレンタルの異業種3社による共同幹線輸送が具体化。今回の受賞事例はキユーピーグループ内の荷物を往復で輸送するものだったが、こうした、企業や業界の枠を超えた共同運行も重視し、「往復運行になるよう、同じような困りごとを抱えるメーカーなどにマッチング輸送を提案していきたい」とキユーソーティスの本社営業所配車課兼営業推進グループモーダル推進チームリーダーの庄司明氏は展望する。
(2019年12月19日号)


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