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【ズームアップ】首都圏で倉庫スペースがひっ迫

2019.10.03

首都圏で倉庫が不足している。10月の消費増税前の駆け込み消費をにらんだ在庫の積み増しやEC化の拡大、物流拠点の消費地シフト傾向が需要を押し上げているもので、物流不動産、営業倉庫ともに空きがなくなりつつある。来年の東京オリンピック・パラリンピックの来場者や訪日外国人の増加などを見越してさらなる需要拡大が見込まれ、当面は倉庫スペースひっ迫の状況が続くとみられている。

メザニン規制や分散化もスペース不足の要因?

CBREの調査によると、2019年4~6月期の首都圏大型マルチテナント型物流施設の空室率は2・7%で04年1~3月期の調査開始以来の最低値となった。また、新規需要17万坪は前期18万9000坪に次ぐ歴代2位の規模。とりわけ東京ベイエリア、外環道エリアの空室率は15年以来の0・0%を記録したほか、神奈川県では空室面積の合計が1000坪を下回り、空室が枯渇している状況にあるという。

理由のひとつに考えられるのが、消費増税前の在庫の積み増し。駆け込みは“小幅”と報じられているものの、日用品などの分野でメーカーが増産や在庫の積み増しに動いており、倉庫の増床が見られる。一方では、EC化により保管効率の低い倉庫が増えたことや、大規模倉庫の火災を機にメザニン(中2階)の設置規制が厳しくなっていることも、より多くのスペースが必要となる一因とされる。

さらに、近年のトラックドライバー不足の深刻化により、輸送距離を短縮化するため消費地に近い立地に物流拠点を充実させる取り組みも増えている。こうした物流拠点の“分散化”傾向が新たなスペース需要を喚起しているのに加え、東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う“特需”も見込まれる。物流拠点の再編を計画するメーカーの担当者も「現状では首都圏湾岸部でまとまった候補地が見つからない」とこぼす。

常温倉庫、4割がスペースを提供できない可能性

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)がこのほど発表した「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた物流課題」のアンケート調査結果によると、約3割が「在庫の積み増し」を、約2割強が「在庫を保管する倉庫、スペースの確保」を物流対策として挙げ、倉庫、保管スペースについては常温で4割、定温(10~20℃)、冷蔵(0~5℃)、冷凍(マイナス18~25℃)もそれぞれ1割が提供できない可能性があるとした。

港湾エリアで足りなくなる倉庫スペースとしては、常温が2割強、定温(10~20℃)、冷蔵(0~5℃)、冷凍(マイナス18~25℃)が各6%。東京オリンピック・パラリンピックでは1000万人の来場が見込まれ、また、20年には訪日外国人が4000万人を突破する試算となっており、業界関係者は首都圏では食品を保管する冷凍冷蔵倉庫や、港湾施設のリーファーコンテナのプラグも不足すると見ている。

こうした中、物流不動産に関しては、繁閑期に合わせてテナント間でスペースをシェアリングするビジネスモデルが構築され、空きスペースと需要をマッチングさせるプラットフォームも展開。営業倉庫でも小規模の空きスペースを賃貸するサービスも登場した。東京オリンピック・パラリンピック後の需要の落ち込みも全体としては小幅との見方が強く、新規開発が後押しされる一方でスペースのシェアも進みそうだ。
(2019年10月3日号)


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