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【ズームアップ】東京港ゲートオープン拡大で効果実証

2019.09.05

東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)を1年後に控え、会期中の東京港の交通混雑回避に向けた試行が8月下旬に行われた。早朝・夜間のコンテナターミナルのゲートオープン拡大では、とくに早朝のオープン時間前倒しにより、海上コンテナ車両の集中緩和と回転率向上の効果が実証された。一方で、コンテナシャーシの一時保管場所(ストックヤード)については、内陸部への運行を夜間にシフトする目的から、利用にあたって時間的制約を課しており、それに合わせるために配車が煩雑になるという課題も浮上している。

早朝ゲートオープンで車両の回転率がアップ

東京2020大会では東京港周辺に多くの競技場が配置され、大会期間中に臨海部の交通混雑を緩和する必要がある。このため東京都ではゴールデンウィーク(GW)前後に続き、今夏のスムーズビズ集中取り組み期間においてもコンテナターミナル(CT)で早朝と夜間のゲートオープン時間の拡大のトライアルを実施した。

8月19~23日の5日間、東京港の全CTで、早朝については通常「8時30分」のゲートオープン時間を「7時30分」と1時間前倒し。夜間は通常“札掛け”(その時点で列の最後に並んだ海上コンテナ車両に看板をかけてその車両以降の搬出入を受け付けないルール)が「16時30分」となっているのを「18時」とし、1時間半延長した。また、それに合わせて、各社によって時間が若干異なるものの、バンプールの営業時間も拡大された。

今回のトライアルに関し、東京都トラック協会海上コンテナ専門部会の会員店社からは、「とくに早朝ゲートオープン拡大の効果が表面化した」とし、恒久的な実施を望む声や、大会期間中にはゲートオープン時間を「6時30分」とさらなる前倒しを提案する意見も寄せられている。

CTとバンプールが両方早朝からオープンすることで、車庫から港までの距離が長い内陸の海コン業者は、通常より早い時間に空コンテナを返却した後、実入りのコンテナの搬出が可能。港頭地区の海コン業者も前日夕方に“積み置き”せずに、当日の早朝に当日配達分のコンテナを搬出できるなど、回転率が向上する。

通常、8時30分前にはゲートオープンを待つ車両でCTのレーンに長蛇の列ができているが、1時間オープン時間が前倒しされたことで、その分、“はけ”が早くなり、トライアル期間中は8時30分時点でほとんどの車両が港を出発して配達に向かっており、「大井ふ頭のレーンの車両がほとんどいなくなった」(大井ふ頭の海コン業者)という。

夜間についても一定の効果があり、“札掛け”時間が18時に統一されたことで、18時までに列に並べばコンテナを搬入できるため、その日のうちにシャーシを空けることができ、従来2日がかりだった作業が1日で完結。バンプールの営業時間も拡大されたため、空コンテナを当日のうちに返却できる可能性が増加し、翌日の車両の稼働率を高められた。

シャーシプールやトラックの待機場の整備を

一方、東京2020大会の混雑緩和に向けた東京港の目玉の施策とされるストックヤードについてはどうか――。都は大会期間中、東京港に24時間利用可能なストックヤードを設置し、日中にCTから引き出しておいたコンテナをストックヤードで一時保管(オンシャーシ状態)し、内陸部へコンテナの配達を夜間にシフトするスキームを構想している。

都では城南島に新たなストックヤードを開設し、8月19~30日に実証実験を実施。ストックヤードの募集区画は84区画で最大252台駐車可能(1区画につき3台駐車可能)。今回の実証実験では駐車スペースのうち10%について、ラウンドユースを行うコンテナシャーシに割り当てることとした。

ストックヤードの狙いは夜間運行へのシフトであるため、利用にあたって「18時の時点でストックヤードにコンテナシャーシが保管されていること」という条件が設けられている。しかし、海コン業者からは「18時までストックヤードにコンテナを留め置き、かつ荷主が指定する夜間の時間に配達するのは、時間的に厳しい」との指摘もある。

また、従来から港頭地区の海コン業者は自社の車庫などを活用し、独自に夜間運行スキームを組み立てて実施しており、「あえてストックヤードを利用するメリットが感じられない」という。時間的制約に伴う使いにくさもあってか、19日の初日はストックヤードの3分の1程度の駐車スペースが埋まっていたが、徐々に利用が減少した模様だ。

なお、ISOタンクコンテナなど危険物を積載したコンテナについては消防法の規制によりストックヤードには留め置きができないと想定される。

都では城南島以外にもストックヤードを増設する方針だが、港頭地区に車庫を確保しにくい内陸の海コン業者はストックヤードよりシャーシプールの設置要望が強い。ふ頭内では一般のトラックの待機の列が道路をふさいでいるケースもみられ、大会期間中の海コン車両のスムーズな運行のため、トラックの待機場の整備も求められている。
(2019年9月5日号)


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