【国交省・物流】ホワイト荷主にインセンティブを=トラック中央協議会
国土交通省と厚生労働省は22日、「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」(野尻俊明座長・流通経済大学学長)と「トラック運送業の生産性向上協議会」を開催し、長時間労働是正に向けた施策の優良事例をまとめた「2016年度パイロット事業事例集(プレガイドライン)」の素案について意見交換した。委員からはトラック事業者に協力的な荷主に対する評価や荷主側のインセンティブの明確化の必要性も指摘。また、「働き方改革」関連ではトラックドライバーの副業・兼業について、時短との整合性が議論された。
プレガイドライン、コストとメリットの明確化を
協議会の開会に当たって、国交省の奥田哲也自動車局長は、「昨年8月にトラック運送業の働き方改革を進めるため『直ちに取り組む施策』を策定し、各省庁連携で取り組んでいる」と報告し、同協議会と全国の地方協議会での議論も施策に反映していると説明。「16年度から2年間にわたってパイロット事業に取り組んできた中で、さまざまな成果と知見を得た。今後もそこで得られた成果を水平展開するなど、施策を通した定着を図っていきたい」と表明した。
プレガイドラインは、トラック予約受付システムの導入による荷待ち時間の削減やパレット活用等による荷役時間の削減、発荷主からの入出荷情報等に事前提供による拘束時間の削減など実施項目ごとに優良事例を分類。各事例を水平展開しやすいように、「実施者の概要」「事業概要」「課題」「事業内容」「結果」「荷主企業・運送事業者のメリット」「結果に結びついたポイント」の順で解説。夏ごろに開催する次回の協議会で完成させ、17年度・18年度のパイロット事業は、別途ガイドラインとしてまとめる。
素案に関し、トラック側委員として出席した全日本トラック協会の馬渡雅敏副会長(松浦通運)は「(トラック事業者に)協力的な荷主を『ホワイト経営荷主』として評価することも必要だ」と指摘。三菱商事の鈴木賢司ロジスティクス統括部長も、「当該事業のコストとメリットを明確化しなければ、荷主としては取り組みへのインセンティブが得られない」と述べた。
また、運輸労連の難波淳介中央執行委員長は、トラックドライバーの長時間労働の是正について「時短が合理化・コストカットに直接結び付けられてはならない」と述べ、荷主の取引環境改善への捉え方が重要だと指摘した。
副業促進ではなく、多様な働き方を認めていく
続いて厚労省担当者が働き方改革法案と1月に策定された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」について説明したことを受け、交通労連の山口浩一中央執行委員長は「働き方改革で時短を進める一方で、副業・兼業を促進する動きは、相反するとも言えるのではないか」と述べた。さらに、全日本トラック協会の辻卓史副会長(鴻池運輸)も「残業時間を規制するのは結構だが、一方で副業を勧めるというのは矛盾する話だ」と指摘した。
厚労省担当者は、「副業を促進していこうということではなく、多様な働き方を認めていく考えに立っている。『副業・兼業の促進に関するガイドライン』でも、あくまで長時間労働や過重労働につながらないように整理している」と、本ガイドラインの趣旨を改めて説明した。
(2018年2月27日号)