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【運賃】物流コスト増で、荷主の「商品値上げ」加速

2017.12.05

上昇が続く物流コストを反映して、荷主企業で商品価格を値上げする動きが加速している。ビール業界ではアサヒ、サントリーに続き、キリンビールとサッポロビールも来年4月から一部商品を値上げすると発表。化学品業界でも出光、DICが原料価格に加えて物流費の高騰を要因とする価格改定に踏み切った。労働力不足や軽油価格の高騰などを背景に、先行する物流会社の値上げ交渉が荷主業界に一定の影響力を及ぼした格好。今後、消費者やエンドユーザーへの価格転嫁がさらに進めば、まだ“果実”を得ていない中小物流会社でも適正運賃・料金の収受が進むことが期待される。

人手不足など物流環境の悪化で「自社での吸収に限界」

ビール業界で先陣を切ったアサヒビールは10月4日、厳しさを増す物流環境に対応するため、ビール類、リキュール、焼酎の一部の生産者価格を来年3月から改定する、と発表した。ビール類の総市場、とくにリターナブル容器商品の縮小が続く中で、「酒類業界を取り巻く物流環境は車両不足やドライバー不足による物流費の上昇により厳しさが増しており、リターナブル容器商品は空容器の回収・洗浄・保管等の負担が増加している」ことを理由にあげた。

サントリービール、サントリースピリッツも11月21日に「物流環境の悪化に伴う酒類リターナブル容器商品の空容器回収コストなどの増加を企業努力だけでは吸収することは極めて厳しい状況」との理由で価格改定を発表。さらにキリンビールも同28日、「ドライバーを含めた人手不足、賃金の高騰など長期的な物流コストが上昇する傾向が続き、酒類容器回収商品は総販売原価割れの改善が必要」として一部商品の価格改定を発表した。サッポロビールも同29日に値上げを発表。ビール4社が足並みを揃えた。サントリー、キリン、サッポロとも改定時期は来年4月から。

素材系など他業界でも製品価格改定の動きは広がっている。DICは原料価格に加え、物流コストの上昇の吸収が極めて困難であるとし、2月21日納入分からポリスチレン製品(㎏あたり35円)、12月1日出荷分から可塑剤(㎏あたり13円)を値上げ。出光興産も10月30日出荷分からアクリル酸、アクリル酸エステルの価格を㎏あたり15円以上値上げした。

このほか、食品トレーのエフピコ、電設資材のパナソニックエコソリューションズも物流費上昇を価格に転嫁した。

荷主の物流コストは今後も上昇を続ける…

ドライバー不足の深刻化などを受け、荷主企業の物流コストは上昇傾向にある。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の調査による2016年度の荷主企業の売上高物流コスト比率は、4・97%となり、前年比0・34pt、過去20年で最大の上昇率となった。

今後に目を転じても、労働力不足のさらなる深刻化、働き方改革に伴うコストアップなどにより、物流コストの上昇トレンドは続くことが予想される。荷主企業にとっても、事業にとって不可欠な「モノを届ける」ためには、物流会社に一定の“対価”を支払うことは避けられず、負担の一部を購買者に転嫁する動きはさらに加速するだろう。

運送約款改正、中小物流会社にも価格交渉の余地

11月から標準貨物運送約款が改正され、「運賃」と積み降ろしや附帯作業等の対価である「料金」を別建てで収受できるようになった。だが、中小運送会社からは「荷主もギリギリのコストでやっている。ないものは出てこない」として、制度改正をテコにした料金交渉に一部であきらめムードも漂っていた。

しかし、ここへきて物流業界の人手不足への社会的認知や宅配会社の一連の値上げなどによって環境が徐々に変わってきた。BtoB物流分野でも、荷主企業の商品価格改定がさらに進めば、中小物流会社にも価格交渉の余地が出てきそうだ。
(2017年12月5日号)


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