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「自動物流道路」実験を27年度までに開始=政府

2024.08.01

政府は7月25日、第5回「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を開催し、2027年度までに「自動物流道路」の社会実験を行うことを決定した。建設中の新東名高速道路の一部区間で実施する。将来は東京~大阪間で自動物流道路を実現することを目指す。そのほか、宅配便の再配達率削減事業を10月から開始することや、ダブル連結トラックの通行区間の拡充、成田空港の機能強化の推進などを決めた。

大型AGVが標準パレット貨物を輸送

岸田首相(写真中央)は「今後の人口減少社会を見据えると、物流機能維持には、物流の常識を根本から革新していく取り組みが不可欠だ」と述べ、迅速な対策実施を指示した。自動物流道路は、荷物を積載した電動式の自動走行カートが、高速道路の中央分離帯や路肩・法(のり)面に設けた専用レーンを走行する仕組み。建設中の新東名「新秦野IC(神奈川県)」~「新御殿場IC(静岡県)」などで社会実験を27年度までに行う。自動走行カートは物流倉庫や工場などで利用される大型無人搬送車(AGV)を利用する。土台となる11型パレット(平面積1100×1100㎜)に荷物を積み付けた後、パレットをカートに載せる。荷物と土台を合わせた高さは1800㎜以下とする。走行速度は今後検証していくが、時速30㎞程度を中心に想定している。実験では輸送時の安定輸送の技術開発をはじめ、道路に与える影響、荷物の積み替えや自動荷役への対応、荷物管理に必要なICタグ・バーコードの装着について検証する。

社会実験により課題を整理した後は、34年度をメドに渋滞が発生する大都市近郊の区間で実証輸送を行うこととしている。将来的には東京~大阪間で自動物流道路を実現し、物流の生産性向上や担い手不足への対応を図る。輸送品目は食料品や日雑品などを中心とし、実証輸送の実施主体は物流事業者・荷主など民間企業とする。

再配達対策で「1配送・5円」を補助

宅配便の再配達率削減を図るため、10月以降、置き配やコンビニ・宅配会社営業所での受け取りなどを選択した利用者にポイントを還元する事業を行う。国は参加企業に対し1配送あたり最大5円を補助する。実施期間は参加企業の認定時から来年1月14日までの期間とした。認定済み企業には、EC事業者ではアマゾン、楽天、LINEヤフーなど、物流事業者ではヤマト運輸、佐川急便、日本郵便などがあり、全体では20~30社の企業が参加する予定で、近日中に参加企業を補助事業専用サイトで公表する。

ダブル連結トラックの通行区間は、初となる北海道、首都高速、阪神高速、上信越道、北陸道、中国道など合計約1200㎞で実施する方針。これにより、現在の約5140㎞から約6330㎞に拡充する。要望の多かった「関西国際空港IC」と阪和自動車道「松原IC」や阪神高速「住吉浜IC」「六甲アイランド北IC」間も通行可能となり、関西空港から首都圏までが通行可能となる。現在はパブリックコメントを実施中で、9月以降に通行許可申請を受け付ける。

成田国際空港の機能強化については、C滑走路の新設やB滑走路の延伸に対応し、千葉県と連携しながら空港アクセス道路などの整備を行う。また、特区を設けることで空港地区の国際物流拠点での外国人労働者の活用に取り組む。
(2024年8月1日号)


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