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国内の総輸送量は41・7億t、2年連続マイナス=NX総研「経済と貨物輸送の見通し」

2023.07.13

NX総合研究所(本社・東京都千代田区、廣島秀敏社長)7日、「2023年度の経済と貨物輸送の見通し」改訂版を発表した。23年度の国内経済の実質成長率は0・7%増と前年度よりも減速すると予測。23年度の国内貨物総輸送量は41億7840万t、前年比約730万t減(0・2%減)とし、建設関連貨物が下押しすることで2年連続のマイナスを見込んだ。23年度の輸送量モード別にみると、国内貨物はJRコンテナが0・3%増と4年ぶりにプラス、営業用トラックが0・7%増と2年ぶりにプラスと予測した。

国内経済成長率は0・7%増と鈍化

国際通貨基金(IMF)が4月に発表した23年度の世界経済成長率は前回(1月)予想から0・1pt下方修正した2・8%増だった。NX総研はこれを踏まえつつ、ウクライナ情勢や中国経済の不振など世界経済の下振れリスクを加味した上で国内経済の見通しを立てた。NX総研シニアコンサルタントの佐藤信洋氏は「国内経済の実質経済成長率は21年度の2・4%増から22年度は1・4%増と鈍化。23年度は0・7%増とさらに減速する」と予想。その背景として「個人消費、設備投資ともに減速し、住宅投資も微減となり、在庫投資も減少するなど、経済成長率への民間需要の寄与は低下するものとみている。公共投資は3年ぶりにプラスとなることから公的需要は小幅ながら伸長する」とした。一方、輸出は微増、輸入は微減となり、成長率に対する外需の寄与度は小幅ながらプラスに転換すると予測した。

消費・生産貨物はプラス、建設関連はマイナス

それに伴い、国内貨物輸送量は21年度の42億5240万tから22年度は41億8570万tと減少(1・6%減)、23年度は41億7840万tと約730万t減(0・2%減)となり、2年連続のマイナスを予測。消費関連貨物をみると、22年度は価格高騰が需要を下押しし3・5%減。23年度は前年の反動もあり1・8%増と予測し、生産関連貨物は22年度の0・3%増から23年度は0・7%増とわずかながら上向くとした。一方、輸送量全体の4割を占める建設関連貨物は、22年度の2・1%減から23年度の1・8%減と若干の回復が見込まれるものの、水面下の推移が続き、全体の輸送量を下押すると見込んだ。

JR貨物のコンテナが4年ぶりにプラスを回復

23年度のモード別貨物輸送量をみると、JR貨物のコンテナは積み合わせ貨物や自動車部品が堅調に推移することで0・3%増と4年ぶりにプラスを回復。トラックドライバーの労働時間規制が厳格化される「2024年問題」が追い風となり、大幅な増送が期待されるとの見方もあるが、NX総研の予測は若干控えめな数字となった。その要因として、鉄道貨物輸送では、頻発化・激甚化する自然災害の影響により運休・不通となるなど輸送障害の発生時には代替輸送を行うことになるが、一部の荷主には迅速・円滑な代替輸送を実施することへの懸念があるためだと考えられる。

JR車扱は石油が前年の反動減となるも、セメント・石灰石の増送などを受け、22年度の1・4%増を上回る3・7%増と伸長する見込み。

営業用トラックはトータルで0・7%増と2年ぶりにプラスを回復。品目では消費関連・生産関連が堅調に推移する一方、新設住宅着工戸数の減少などから建設関連は低調に推移する見込み。自家用トラックは2・1%減となり前年の1・4%減に続き2年連続で減少するとした。

内航海運は22年度の1・1%減から23年度は0・1%増と小幅ながらプラスに反転。国内航空は4・3%増と3年連続の増加を維持。ただ、コロナ禍で落ち込んだ反動増の要因があり、輸送量はコロナ前の19年度の7割強にとどまる。

国際貨物をみると、外貿コンテナ貨物の輸出は世界経済のゆるやかな回復基調を維持することを受け2・0%増と2年ぶりにプラスに転換。一方、輸入は生産財の荷動きが回復するも消費財が低調で1・1%減と2年連続の減少。

国際航空貨物は、輸出は半導体関連の停滞と海上シフトの長期化により7・8%減とマイナスが続き、輸入は消費財の荷動きが依然として低調なことから6・5%減と2年連続のマイナスになると見込んだ。

7月以降の「荷動き」は緩やかに回復か?

「経済と貨物輸送の見通し」と同時に、荷主企業へのアンケート調査により荷動きの実績・見通しを示す「荷動き指数」の速報値を発表した。23年4~6月の指数(実績)はマイナス12となり前期(1~3月)から横ばいに推移。それに対し、7~9月の指数(見通し)はマイナス4となり、4~6月実績よりも8pt上昇する予測が示された。佐藤氏は速報値の段階であると留保した上で今後の動きについて言及。「4~6月の見通しはマイナス6だったが、フタを開けてみるとマイナス12と6pt低下した」と指摘し、続く7~9月についても様々な経済リスクを視野に入れると「楽観視はできない」と述べた。
(2023年7月13日号)


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