山九、関西最大級のケミカルセンター竣工
山九(本社・東京都中央区、中村公大社長)は16日、大阪府高石市で関西最大級となる危険物倉庫群「関西ケミカルセンター」を開設した。危険物倉庫8棟のうち4棟は温度管理品の取り扱いが可能。「機能性化学品専用倉庫」として医薬品、電子部品材料、リチウム電池など幅広い貨物をターゲットに年内にフル稼働を目指す。山九の危険物倉庫の中でも最大規模となり、同社が推し進める危険物倉庫戦略の中核となる施設として運営していく。
4棟が定温、常温の1棟は高床式に
大阪南港から19㎞、関西空港から28㎞に立地し、敷地面積は約2万7248㎡。常温危険物倉庫4棟、定温危険物倉庫4棟の計8棟(倉庫面積約7944㎡)で構成され、消防法危険物第1類、第2類、第4類、第5類、毒劇物と幅広く対応。保税蔵置場とし、輸出入貨物も取り扱う。定温危険物倉庫は2~25℃と多様な温度帯での管理を行い、各棟の温度は管理棟で一元管理する。
輸出入海上コンテナにも対応できるよう、常温危険物倉庫の1棟は高床式とし、ドックレベラー4基を設置。雨天時のオペレーションを効率化するため、大型庇(4・5m)を備えている。定温危険物倉庫にはラックを導入し保管効率を向上。旺盛な引き合いがあり、すでに常温危険物倉庫の3棟は、EVバッテリー、食品香料、潤滑油の荷主利用が決まっており、約7割稼働からスタートし、年内の満床を目標とする。
BCP対策として、津波を想定した地上レベルの嵩上げ、非常用発電設備の整備、電源設備の高潮対策、緊急遮断弁などの漏洩対策などを講じた。環境対策では、人感センサー、常温倉庫に遮熱シートを導入し、路面には耐久性を向上させつつ、CO2削減にも貢献できる廃PET入りアスファルト舗装を採用。油水分離槽を備え、雨水・排水に含まれる油が海に放流することを防止する設計とした。なお、施工は三和建設が担当した。
危険物の物流、ニーズは非常に高い
竣工式で中村社長は、「現在、危険物の物流に関するニーズは非常に高まっていると感じている。とくに化学品メーカー各社では、日本における高付加価値商品へのシフト、海外での汎用品生産という動きも見られ、サプライチェーンという考えに立った時に、原料として利用される様々な危険物の輸出入貨物の取り扱いや、港や空港に近い倉庫での保管需要が増している」と指摘した。
「山九グループでは、事業を通じて産業に貢献することを、存在価値のひとつにとらえており、長年にわたり、お客様の構内での作業を中心に蓄積してきた化学品・危険物の取り扱いに関するノウハウを活かし、世の中の需要に応えていきたい」と表明。関西ケミカルセンターの立地や機能、サステナビリティへの取り組み、危険物倉庫特有のBCP対策について紹介した。
国内危険物倉庫は8ヵ所2・8万㎡に
中村社長は報道陣の取材に対し、「港頭地区では危険物倉庫の建設が進んでおらず、お客様の工場での仮置きにもリスクがある。(危険物倉庫は)需要があるのに供給が足りていないのは明確だった。自分たちが建てたいからというよりも、社会的に不足していることを念頭に建設に至った」とし、関西ケミカルセンターについて「半導体原材料、自動車用電池など新しいお客様を開拓する武器になり、フロンティア的な機能がある」と強調した。
プラント・エンジニアリング、ロジスティクス、オペレーション・サポートを有機的に結びつけた山九のユニークなビジネスモデルにも触れ、危険物倉庫の活用による「物流と構内(請負)の連携」にも期待を寄せ、「お客様に代わって物流をお任せいただき、将来的にはデータの共有も進めていきたい。お客様の生産データ、当社の在庫のデータを連携させ、最適な生産を実現するなど、これまでの取り組みからさらにバージョンアップ、アップデートしていきたい」と展望した。
なお、山九では鹿島、千葉、四日市、兵庫、周南、北九州、大分の7ヵ所で総延床面積約1万4800㎡の機能性化学品倉庫を運営しているが、今回の関西ケミカルセンターの開設によって、業界でも上位となる国内8ヵ所計2万2800㎡を保有することになる。
(2023年5月23日号)