「標準的運賃」「荷主対策」延長求む=自民党物流調査会提言
自民党の物流調査会(会長=今村雅弘衆議院議員)は11日、物流の「2024年問題」に対応するため、政府への提言案をまとめた。改正貨物自動車運送事業法が2024年3月末を時限と定める「標準的な運賃の告示」と「荷主対策の深度化」の両制度について「当分の間」継続すべきだとしたほか、荷主と元請事業者がトラックドライバーの労働環境改善を行うため、指導と規制を伴う措置の導入も盛り込んだ。政府は6月に開催する関係閣僚会議において、提言を踏まえた上で「2024年問題」に対する政策パッケージを策定する。また、両制度延長のためには法改正が必要となるため、年内の国会への議員立法による改正法案提出を目指す。
一定の強制力で「荷待ち時間」解消へ
提言には、トラックドライバーの長時間労働の主な要因となっている長時間の荷待ちを解消するため、荷主と元請事業者が改善に取り組むよう、指導と規制を行う措置の導入を盛り込んだ。また、トラック運送業の多重下請構造を是正するための規制を設ける。いずれの規制的措置にも命令や勧告など一定の強制力を持たせる。
従来の物流政策では、トラック運送において荷主が物流改善に取り組むよう促進する制度の整備が不十分で、とくに着荷主において長時間待機が発生することへの対策がなされていなかった。そこで、命令・勧告など一定の強制力を備えた指導・規制的措置を新たに設けることとした。
提言案は「2024年問題」への対策を図る政府の関係閣僚会議が示した考えを踏まえ、①GX・DXや標準化などによる物流の効率化②荷主・物流事業者間などの取引実態の是正③荷主企業や消費者の行動変容を促す仕組みの導入――など3つの基本政策を打ち出した。それぞれの政策テーマに基づき、具体的施策を定めている。
改正事業法の時限措置は周知、浸透が“途上”
同調査会では改正事業法の時限措置延長も議論。近年のトラックドライバー不足を背景に、年間労働時間や年間賃金をはじめ、トラック運送業と全産業平均との差は徐々に縮まりつつある一方、新型コロナウイルスのまん延や原油価格高騰により、赤字企業の割合は増加傾向にあると指摘。取引環境改善は「道半ば」だと判断した。
国土交通省が実施したアンケート調査では、約半数の事業者が「標準的な運賃」を用いて運賃交渉を行ったものの、荷主から一定の理解を得られたのはそのうちの約3割。荷主に対して物流改善を働きかける制度についても、荷主の認知度が約3割にとどまるなど、いずれも周知・浸透が〝途上にある〟とした。
そうした背景から、引き続き、改正事業法による施策を実施するとともに、厚生労働省が実施する荷主対策や公正取引委員会・中小企業庁が実施する価格転嫁対策など関係省庁と連携した取り組みが不可欠だと提言した。なお、提言は部分的な修正を施した後、正式な提言として政府に提出する方針。
(2023年5月18日号)