トラック業界、公正な競争環境の整備へ前進
改正貨物自動車運送事業法に基づく施策の柱である、トラック事業者の健全な事業運営を促す「規制の適正化」や「事業者の遵守すべき事項の明確化」の進捗が明らかになってきた。国土交通省は4月から、悪質なトラック事業に対する指導を強化し、指導の頻度を増やす。また、2021年11月以降、最低車両台数の基準である「5台」を下回る減車申請を原則認可しないなど許認可を厳格化しており、「2024年問題」を1年後に控え、トラック運送業界の公正な競争環境を整備する動きもいよいよ本格化してきた。
悪質事業者に対する巡回指導の頻度上げ
18年12月に議員立法により貨物自動車運送事業法が改正され、「規制の適正化」「事業者が遵守すべき事項の明確化」「荷主対策の深度化」「標準的な運賃の告示制度の導入」の4つの措置が講じられることになった。荷主対策の深度化では、国交省ホームページに「トラック目安箱」を設置し、悪質荷主の情報を収集。2月末時点で「働きかけ」76件、「要請」3件を発出した。標準的な運賃については、2月末時点の運賃変更の届出率は53・5%となり、2社に1社が届出を完了した。
一方、トラック業界自らの襟を正す、「規制の適正化」や「事業者の遵守すべき事項の明確化」についても進捗がみられる。国交省は4月1日から、事業者の違法行為や無許可の運送事業等について改善指導する「適正化事業」の運用を強化。適正化実施機関である都道府県トラック協会が行う巡回指導の総合評価が5段階評価のD(準最低)・E(最低)で、改善がみられない事業者への巡回指導を半年に1回の頻度に高めた。
従来、総合評価がD・Eとなった事業者に対しては、運輸支局に改善報告を提出させた上で概ね2~3年後に2回目の巡回指導を実施していたため、次の巡回指導を実施するまでの期間に、適正な事業運営を行わなくなるケースについてはチェックが不十分だった。4月からの新制度の運用では、3回連続でD・E評価だった事業者は国の監査や行政処分の対象となる。運輸支局は都道府県トラック協会からの報告を受けた場合は速やかに監査を実施する。
国交省の関係者は「改正貨物自動車運送事業法に基づく『規制の適正化』は順調に進んでいる」との認識を示し、今後も「トラック運送業の健全な発達を図るため、継続して取り組んでいく」考えだ。
5台割れの減車申請は認可制、原則認めず
19年11月から、事業者の新規参入の条件となっている営業所に配置する最低車両台数「5台」を下回る減車申請については、届出制から認可制に移行し、5台割れの減車申請については原則認められないこととした。事故で一時的に4台になった場合などは、修理箇所の写真や修理の見積書、購入する新車の購入証明書などを添付したうえで申請が必要。運輸支局によれば、経営不振やドライバーが確保できないといった理由での5台割れ減車申請は認められない。
なお、登録抹消や名義変更を行うにも、運輸支局輸送担当に減車申請が必要であるため、「隠れ5台割れ」による事業継続は実質的に不可能だとされる。最低車両台数の基準を満たさないことによる撤退・廃業もみられるという。
一連の制度改正により、健全な事業運営を阻害する悪質な事業者が排除されるとともに、最低車両台数を維持できないほどの事業基盤が著しく脆弱な超零細企業は事業運営が困難になると予想される。「2024年問題」への対応策では、トラック業界の多層構造の是正にも焦点が当てられていることから〝多数乱戦〟業界の構造改革に向けた前進が期待される。
(2023年4月27日号)