西濃運輸、デバンニング作業を完全自動化

今月１日付で西濃運輸と統合した濃飛西濃運輸は３月30日、川崎重工業が開発したデバンニングロボット「Ｖａｍｂｏ」を富加物流センター（岐阜県富加町）に導入した。Ｖａｍｂｏはコンテナ内に自走して進入し、独自の３次元ＡＩビジョンとハンド技術を用いて大小様々なサイズのカートンを取り出すことができる、デバンニングの完全自動化機器。夏場などには過酷な労働環境となるコンテナ内荷役をロボット化することで労働力の確保につなげ、持続可能なセンター運営を実現する。

ＤＣＭの入庫業務に導入、ホームセンター業界で初

富加物流センターは敷地面積４万９８００㎡、建物面積１万７５００㎡の平屋建て物流センターで、ホームセンター大手ＤＣＭのＤＣ拠点として、中部地区に約１８０店舗を対象とした出荷業務を担う。取扱商品は輸入品が中心で、月間のコンテナ搬入数は３６０ＴＥＵ超。コンテナ１本には５００～６００個のカートンがバラ積みされており、デバンニング時には専任の作業者６人が平均１・５時間かけて荷降ろししてきた。

一方でコンテナ内の作業環境は、夏場には庫内温度が50～60℃まで上昇するなど過酷な状況となる上、荷降ろしする商品には重量物もあり、作業負荷の大きさから人材の定着率が低く、作業者の確保が課題となっていた。既に、デバンニング作業者の平均年齢も70歳を超えており、今後のセンター運営を継続するためにもデバンニング作業の自動化を決めた。

今回導入したＶａｍｂｏは無人搬送機（ＡＧＶ）に川崎重工製の中型汎用ロボット「ＲＳ０８０Ｎ」を組み合わせたデバンニング自動化機器。自社開発の３次元ＡＩビジョンシステムでカートンの位置や大きさ、傾きを即時に判断し、自動で取り出すことができる。取り出しハンドはデバンニング作業専用に開発し、吸着技術とコンベアベルトの併用でカートンを安定的に搬送可能。２個のカートンを同時に掴むこともでき、１時間あたり最大６００個の取り卸し作業に対応する。

富加物流センターでは、５ヵ所あるコンテナ搬入口の１ヵ所をＶａｍｂｏ用とし、対象となるサイズ・重量の貨物のみが積まれたコンテナを同レーンへ優先的に搬入。Ｖａｍｂｏの利用により関わる作業者は２人に削減でき、作業内容もコンテナ外に排出されたカートンをパレット積みする荷役のみに改善された。作業時間も人手によるデバンニング作業時と同等のスピードを維持している。

Ｖａｍｂｏ導入の決め手となったのが、アフターサービスだ。省人化・自動化機器は海外企業やスタートアップによるソリューションも少なくないが、“止められない”物流現場においてはトラブル時の迅速な対処が必須となる。川崎重工では全国各地にサービス拠点を持つ上、リモート操作によるトラブル対応やＡＩの再学習も可能。自社開発製品であることから対処もスピーディであり、安心感を持って運用できることが購入の後押しになったという。

富加物流センターでは昨年３月にメイキコウ製の「デバンダ」も採用。デバンダはコンテナ内に進入した昇降式作業台に作業者が乗り、ベルトコンベア上へカートンを取り卸すタイプの、デバンニング“省人化”機器となっている。Ｖａｍｂｏの効果を実感しながらも、対応する荷姿のアイテムが全ＳＫＵの７割弱ということもあり、今後はデバンダとＶａｍｂｏ各１台を併用していく。いずれの機器も可搬式であることから、柔軟かつ最適な運用を目指す。

その上で、デバンニングの後工程となるパレタイズの自動化についても、引き続き研究する。また、デバンニングの自動化に伴い、取り卸し時に商品情報を読み込んでデジタルデータ化し、スルー型貨物の仕分け作業に活かしたり、さらにはサプライチェーン上で共有することによる物流全体最適につなげたりする仕組みの構築なども構想していく。

濃飛西濃の“ロジ”をベンチマークのひとつに

濃飛西濃運輸は１９４７年設立の濃飛合同産業が63年にセイノーグループ（当時西濃運輸）傘下入りし、今月１日に、関東西濃運輸、東海西濃運輸とともに西濃運輸と統合した。売上全体に占める特積み事業比率が６割を切るなど、セイノーグループの輸送事業会社の中でもロジ事業の比率が高いことが特長で、Ｖａｍｂｏやデバンダのほか、デジタルサイネージやＡＧＶの導入など、自動化・省人化、デジタル化にもグループ先駆的に取り組んできた。

濃飛西濃運輸で社長を務めた小森紳司・西濃運輸副社長は「西濃運輸単体では年間７４０万ｔに上る特積み貨物を扱う一方で、特積み貨物を今後急激に伸ばすことは難しく、奥行きのあるロジ事業と貸切便事業を拡大させるべく、サプライチェーンの川上から川下に至るトータル物流の獲得を進める方針にある。そうした中で、濃飛西濃運輸のロジ事業は今後重要なベンチマークのひとつになる」と話す。
（2023年4月25日号）