アパレル業界でRFID導入拡大=JAFIC「RFIDセミナー」
アパレルメーカーによるRFIDの導入が進んでいる。日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC、松尾憲久理事長)のRFID推進小委員会(山内孝二委員長・オンワード樫山)が12日に開催した「2022夏RFID最新動向セミナー」では、同協会の会員であるアパレルメーカーのうち14%がRFIDを自社業務に採用しており、成果を挙げていることが報告された。背景には、コロナ禍における非接触・省人化システムへの関心の増加や、2024年問題対策としての業務効率化への注目があるという。
アパレル業界では他業界に先駆けてRFID導入への関心が高まり、JAFICでも2004年に、SCM委員会の下へRFID推進小委員会を設置した。同委員会を通じて、RFIDを先行導入したオンワード樫山、シップス、バロックジャパンリミテッドの3社とRFIDベンダーらが他のアパレルメーカーへ積極的に情報を発信したことが、後続の企業への普及につながった側面もある。
小委員会では、例えば現場での詳細な運用方法や社内における調整およびプロジェクトの立ち上げ方法、原価を最小化する手法、読取精度を高めるための現場やシステム面での工夫など、各社が実際に取り組み、成果を挙げた内容が共有され、「1社単独での取り組みでは得られない知見を分けてもらえた」(堀清隆副委員長・ワコール)という。
こうした活動を経て、現在JAFIC正会員141団体のうち、RFID導入企業は20社となり、年々増加傾向にある。RFID推進小委員会が19年に実施した調査によると、導入企業がRFIDを活用する業務範囲は物流センターと店舗が多く、とくに物流センターでは入出荷業務や返品作業での利用が中心。各社とも導入フェーズは異なるが、「そのフェーズを少しずつ増やすことで効果を発揮している」と堀氏は話す。
RFIDセミナー今年は2回開催予定
その上で、「委員会内での情報交換にとどまらず、より広く発信したい」との考えから、昨年3月に第1回目の「RFID最新動向セミナー」を開催し、今回はその第2回目となる。アパレルメーカーによるRFIDへの注目の高まりを受け、今年度は11月にもセミナーを行う予定で、「基礎的な内容だった今回に続き、応用編として海外での活用事例なども取り上げたい」(山内委員長)考えだ。
12日のセミナーでは、山内委員長による挨拶の後、堀副委員長がJAFIC内でのRFIDの導入状況を報告。併せて、ワコールとしての活用事例を紹介し、現在、直営店舗約80店への先行導入が完了するとともに全卸売商品へのタグ付けを開始しており、レジ業務や棚卸作業の効率化につながっていることを報告した。また、返品作業における活用も実証実験中で、年間作業時間を約7400時間から3000時間まで削減できる見込みにあるとした。
その後、RFIDベンダー数社が提供サービスや導入事例を発表するとともに、RFID導入時に活用できる補助金やその申請方法などの情報も提供された。セミナー後に行われた質疑応答では、RFIDタグの読取精度を高めるための施策など実運用に関わる質問も出され、実際にRFIDを活用しているアパレルメーカーらがそれに応えるなど、活発な意見交換が行われた。
RFID推進小委員会は今後、年6回の会合のなかで、RFIDのさらなる活用方法への研究を進めるとともに、各ベンダーがラインナップするサービスの実導入事例などを共有。さらに、より広範に発信できる場として展示会などへの参加も検討していく。
山内委員長は「小委員会の発足当時に比べるとRFIDタグは単価が下がり、品質が向上している。RFIDに興味を持つ企業は増えており、とくにウイズコロナの時代においては、デジタル化の進展に併せてRFIDを用いた情報活用が非常に重要になるだろう」と述べた。
(2022年7月21日号)