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セイノーHD/ラクスル、新会社「ハコベル」を共同出資で設立

2022.06.16

セイノーホールディングス(本社・岐阜県大垣市、田口義隆社長)とラクスル(本社・東京都品川区、松本恭攝社長CEO)は10日、新たな物流プラットフォームの構築で連携すると発表した。ラクスルが手掛けてきたハコベル事業を8月1日付で分社化して新会社「ハコベル」を設立。その上で、同月8日付でセイノーHDが新会社に出資して合弁会社に移行する。新会社の資本金は10億円で、出資比率はセイノーHDが50・1%、ラクスルが49・9%。同日、都内のラクスル本社で会見したセイノーHDの田口社長は「日本の物流にはまだまだムダやムラ、つまり効率化の伸びしろがある。両社で新会社を共同設立して、物流業界全体で使っていけるオープンパブリックプラットフォームにしていくことで、SDGsを実現するためのグリーン物流にも貢献していきたい」と述べた。また、ラクスルの松本CEOは「ハコベル事業は、仕組みとしては非常に良くできているが、このままのやり方では、日本の物流インフラになるまでに非常に長い時間がかかると思った」と述べ、セイノーHDと組むことでハコベルの普及を加速させる考えを示した。

シナジー創出で数年内に数百億円規模へ

新会社「ハコベル」は当初、ラクスルのハコベル事業部のスタッフ50~60人がそのまま新会社に異動。社長にはラクスル執行役員でハコベル事業本部長の狭間健志氏が就任する。

ハコベル事業は2015年12月からサービスを開始。ラストマイルから都市間幹線輸送までを対象に運びたい荷物とトラックとをマッチングする車両手配サービスと、配車管理システムの提供という2事業を展開している。マッチング事業では約3万台の車両が登録されるなど、順調に事業が拡大。21年7月期のハコベル事業の売上高は29億3600万円となっている。

今回、ハコベル事業が培ってきたシステム運営力に、路線トラック最大手であるセイノーグループの全国輸送網や顧客基盤などを掛け合わせることで、ハコベル事業を規模、サービス内容ともに拡充させる狙い。中長期では、物流業界の共通基盤となる「オープンパブリックプラットフォーム」の実現を目指し、物流事業者をはじめとする多くのステークホルダーが相互乗り入れできるような仕組みづくりを目指す。新会社の社長に就任する狭間氏は「数年で売上高を数百億円規模まで引き上げ、物流業界の中でもプレゼンスがある領域まで伸ばしていきたい」との意向を示すとともに、「中長期では、輸配送領域にとどまっているハコベルのサービスを、倉庫領域などに広げていくなどサービス提供領域を拡大していきたい」とセイノーHDとの連携によるシナジーに期待を示した。

「物流の景色を変え、グリーン物流にも貢献」田口社長

記者会見の中で、田口社長は「国内を走るトラックの積載率は4割程度であり、残り6割は空気を運んでいる。その意味で物流分野にはまだまだ伸びしろがあるが、縦割り、横割りの限界の中でなかなか境界線を越えることができていない。仮にその境界をスムーズかつストレスなく超えることができれば、サプライチェーンの景色は大きく変わるだろう」と物流業界が抱える課題を説明。「ラクスルは印刷業界で景色を変えてきた。物流の世界でもデジタルを使ったスムーズにつなぐ力によって、空気を運ばない、ムダのない物流を実現し、SDGsのセンターピンであるグリーン物流に貢献していく。ハコベルが一段高いレイヤーから最適なマッチングによる効率化を行っていく。セイノーグループの輸送力はジグソーパズルのひとつのピースとして使っていただければいい」と意欲を語った。

また、ラクスルとの連携に至った経緯について「松本CEOとある勉強会でお会いしたが、いかに公に尽くすかという考えを持っており、『輸送立国』というミッションを掲げる当社と同じ方向性を持っていることに共感した」と述べた。

「ゼロをイチにできたが、このままでは時間がかかる」松本CEO

一方、ラクスルの松本CEOは「当社は『仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる』というビジョンを掲げ、まずは印刷業界の姿を徐々に変えてきた。物流業界でも、インターネットを使って『なめらかにつなげる』『業務効率を改善』することにより、多重下請け構造やドライバー不足といった課題に対峙してきた」とこれまでの取り組みを説明。「ハコベルはテクノロジーとしては良いモノができ、事業として単独で回るところまでは成長してきた。つまり、ゼロをイチにすることはできた。しかし、今のままでは日本の物流のインフラになるところまでは非常に長い時間がかかると思った。そこで、自社単独ではなく、仲間を見つけ、物流インフラの中心にいる方と一緒に運営することでよりハコベルが広まっていくのではないかと考えた」と、セイノーHDとの連携に至った考え方を披露した。
(2022年6月16日号)


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