【話題】リチウムイオン電池、保管規制見直しへ
危険物倉庫での保管需要が高まっているリチウムイオン電池――。2050年カーボンニュートラルを実現するためのEV(電気自動車)の普及を見据え、とくに車載用リチウムイオン電池については長期的な需要が期待されていたが、ここに来て保管規制の見直しが進み、安全対策を講じたうえで、危険物倉庫でなくても保管できる方向性が固まりつつある。
現状、車載用リチウムイオン電池を貯蔵する危険物倉庫は「消防法」および「危険物の規制に関する政令第10条第1項第4号、5号」により、1000㎡以下、平屋建、軒高20m未満と規定されている。
EVが普及すると大量のリチウムイオン電池が日本国内を流通することとなるが、現状の危険物倉庫の面積規制があるために、大量のリチウムイオン電池を保管できず、効率的な物流の阻害要因となり物流コストの上昇を引き起こすとの指摘がある。
消防庁では3月に「リチウムイオン蓄電池に係る火災予防上の安全対策に関する検討会」を立ち上げ、リチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所に係る規制をはじめ火災予防上の安全対策に関する事項の検討を始めた。
車載用リチウムイオン蓄電池(電池パック)の取り扱いについては、特定防火設備と同等以上の耐火性を有する布で覆うことにより、「蓄電池ごとの指定数量の倍数(電解液量)を合算しないこととしてはどうか」(イメージ)という検討がなされている。
具体的には、21年度に開催した「危険物施設におけるスマート保安等に係る調査検討会」で、厚さ1・6㎜以上の鋼板と同等以上の耐火性を有することが確認された「高純度シリカ布」等で覆うことが念頭にある。
脱炭素のカギを握るリチウムイオン電池の保管をめぐっては、危険物倉庫を建てるために臨港地区分区を「商港区」から「工業港区」に変更した例もある。今回の規制見直しにより、保管需要の変化や危険物倉庫マーケットへの影響も注視されている。
(2022年5月31日号)