メニュー

国交省が通運2社、商社、JR旅客から意見聴取

2022.05.10

国土交通省は4月28日、鉄道貨物の輸送量拡大やJR貨物の業績向上を支援する方策などを検討する「今後の鉄道貨物物流のあり方に関する検討会」(座長=根本敏則・敬愛大学経済学部教授)の第2回会合を開催した。7月に行う提言のとりまとめに向け関係企業などから意見聴取を行うこととしており、今回は、日本通運、ヤマト運輸、三菱商事、JR東日本、JR西日本、JR東海の各社からヒアリングを行った。

国際海上コンテナ輸送ニーズの取り込みを

日通からは通運部長の髙橋啓氏が出席。鉄道貨物輸送の輸送量拡大に向けては国際貨物の取扱量拡大が重要だと指摘した。

東北エリアを中心に国際海上コンテナ輸送を展開するなど同社の取り組みを説明した上で、海上コンテナ輸送ニーズの獲得が今後の伸びしろとなるという認識を示した。鉄道の利用拡大への阻害要因では、自然災害による鉄道ネットワークの寸断への対応が不十分な点を指摘。線路の不通や運休が発生した時点で輸送情報が迅速に発信されないことから、トラックによる代替輸送の手配が遅れ、納期の遅延につながるとした。髙橋氏は改善策として「鉄道とトラック、鉄道と船舶が平時からスムーズな連携を実現できるよう取り組むべき」と提言した。

ヤマトからは輸送オペレーション部シニアマネージャーの畠山和生氏が発言。慢性的なトラックドライバー不足や2024年度からのドライバーの時間外労働規制の罰則付き適用(2024年問題)などを背景にトラックによる長距離輸送が困難になる〝新たな物流クライシスの到来〟も懸念されると指摘。関東~九州間のダブル連結トラックの運行による省力化に注力するとともに、24年4月から首都圏~北海道、九州、沖縄地域への長距離輸送に貨物専用機の運航を開始すると報告。持続可能な物流ネットワークの構築に向け、鉄道輸送や航空輸送を含めた複数モードの輸送体制構築を推進する考えを示した。

農産品輸出も鉄道輸送の追い風

三菱商事は物流開発部長の砂田重文氏がWebで参加。国際物流の拡大を見据え、鉄道が国際海上コンテナの輸送需要を取り込むことが重要になると指摘。同社は東北産のコメを鉄道輸送し、海外輸出する事業を行っているが、政府による農林水産物・食品の輸出促進策を追い風として取扱量の増加が見込まれることから、鉄道輸送への期待を示した。加えて、鉄道はCO2排出量が少なくエネルギー効率の高い輸送手段であることなど、環境性能の高さがESG経営の観点からも利用拡大の訴求力となるとした。一方で、鉄道輸送中の振動に適合しない品目など貨物の適性への配慮も重要だとした。

運行ダイヤへの制約に理解を求める

JR東日本、同西日本は貨客混載事業について説明した。コロナ禍を受けて利用者が減少する中、物流方面での取り組みの重要度が増加してきた現状を説明。新幹線の車内販売品用スペースを利用した産地直送品のスピード配送など貨客混載輸送の展開や、在来線での貨客混載事業の拡大を図っていく考えを披露した。また、JR東海も加わり、鉄道線路を保有する企業として発言。重量のある貨物列車が走行することで発生するレールのゆがみや傷つきの補修作業は夜間に行っているため、夜間運行が中心の貨物列車の運行本数を増やすには一定の制約となることへの理解を求めた。
(2022年5月10日号)


関連記事一覧