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日立物流、新中計「アジア圏3PLリーダー」へ

2022.04.07

日立物流(本社・東京都中央区)は1日、同日付で代表執行役会長(CEO)兼取締役に就いた中谷康夫氏と、代表執行役社長(COO)に就任した髙木宏明氏のWeb会見を行った。この中で中谷氏は、今期からスタートした新中期経営計画「LOGISTEED2024」で「アジア圏3PLリーディングカンパニー」を目指すことを示すとともに、「まずはアジア地域で事業売上高1000億円を達成したい」との考えを明らかにした。

中計内にM&Aを予定、インド、マレーシアに投資

中谷氏は会見で、前中計「LOGISTEED2021」を振り返り、「さまざまな『協創』を通じた課題の解決と『価値』の創出に取り組んだが、目指す姿である『アジア圏3PLリーディングカンパニー』の実現に向けてクリアすべきハードルが3つある」と指摘。具体的には、①日本での確固たるポジションを死守しながら、アジアの地域リーダーに進化出来るか、②盤石な経営基盤を構築し増強出来るか、③Society5.0 を支える次世代ロジスティクスでリーダーシップをとれるか――の3点を挙げ、「これらを3年間でやり抜くためには、M&Aを含めた数多くの施策をスピーディーに同時進行させる必要がある」と述べた。

続けて、各種施策を遂行するための新執行体制を紹介。CEOである中谷氏がポートフォリオ戦略や資本政策など経営戦略の策定と決定を担い、COOの髙木氏が会社の持続的成長の基盤となる既存事業の維持・拡大と経営戦略の実行に集中する。中谷氏は「我々はものすごいスピードで色々なことをやり遂げなくてはならず、既存事業に指標を設けて維持拡大することも前提となるため、役割分担をして進めていく」と新体制の意義を強調した。

また、目標に掲げる「アジア圏3PLリーディングカンパニー」については、「(事業売上高1000億円に向けて)既存事業の積み上げだけでは足りず、中計期間中にM&Aも行うつもり。インドやマレーシアで積極的な投資も行い、次期中計ではきっちりと“リーダーになった”ことを見えるようにしたい」と中谷氏。髙木氏も「全世界で国際物流事業を拡大させるが、とくにアジア地域を中心に強化を図り、フォワーディングのみならず3PLも成長させたい」との方針を示した。

国内では自社車両を増強、危険物倉庫も増設

国内においては、ドライバー残業時間の罰則付き上限規制が始まる「2024年問題」を前に輸送力を増強し、「一定数のドライバーを採用して自社車両を運営・管理できる体制を作りたい」(中谷氏)との方針にある。併せて、複数荷主の共同配送やリレー配送など、多様な業種と輸送をシェアリングすることで法令順守につなげる。

また、倉庫施設面では、危険物倉庫の増設を図り、今年は九州および千葉県佐倉地域で新物流センターの開設を予定するが、「必ず危険物倉庫を併設する」と説明。危険物倉庫単体でも需要が高いことから「土地があれば倉庫を作っていく方針にあり、倉庫投資の中で重要な位置づけを占めていく」(同)とした。

他方で、20年に経営統合を見送る方針を発表したSGホールディングスとの関係について中谷氏は「資本の縮小とは別に業務提携はどんどん進んでおり、協業の成果は双方の会社に相当の収益をもたらしている。経営者同士が定期的に次の協業プランを議論する場が設けられており、重要なビジネスパートナーとして今後も同社と付き合っていきたい」と展望した。

日立製作所による保有株式の移動に関しては「日立製作所がここ数年、進めてきた親子上場解消の流れに沿うのであれば意識しなくてはいけないが、現時点で決まっていることは何もない」(同)と述べるにとどまった。

髙木氏の中国における6年間の経営実績を評価

新COOに就任した髙木氏について、中谷氏は「今後の経営環境は予測不可能で、厳しい環境に向かうと思われる中、逆境・逆風に負けない志とリーダーシップが必要であり、髙木氏の中国での6年間の経営実績が評価された」と選任の理由を説明した。

髙木氏は16年に中国極代表として現地に赴任し、この2月に帰任。当時の中国事業は、買収した会社の業績悪化や不良債権の顕在化など厳しい経営環境にあった上、直近2年間はコロナ禍での事業運営で、日本からの人的支援も受けづらい状況にありながらも、中国圏にある複数の事業会社の統廃合を実行するとともに、生産性向上を目的とした自動化、省人化設備の導入を進め、成果を収めた。

髙木氏は「仕事を行う上での信条は『行動は成功への第一歩』であり、中谷CEOとともに『行動』を起こしてチャンスを作るような会社にしていきたい。今後も世界規模で競争力を高め、新体制のもと、当社ビジネスコンセプトの『LOGISTEED』をさらに推進していきたい」と抱負を述べた。
(2022年4月7日号)


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