富士フイルムグループ2社の物流統合加速=富士フイルムロジスティックス
富士フイルムグループで富士フイルム(FF)と富士フイルムビジネスイノベーション(FB)の物流統合が加速している。2019年11月に、米ゼロックスとの合弁会社・富士ゼロックス(現FB)を富士フイルムホールディングスの完全子会社としたことで、物流面でも2社間における情報の連携や共同化が進んでいる。今後、グループの物流機能会社である富士フイルムロジスティックス(FFL、本社・横浜市港北区、三ツ井忠社長)を中心に倉庫や輸配送の集約および最適化を図る。さらに、DXの推進など各種施策をグループで展開することで、21~23年度の中期経営計画内にグローバルで約80億円のコスト削減効果を見込む。
FFとFBの倉庫拠点を集約
具体的な施策のひとつとして、年内をメドにFFとFBのパーツセンターを統合する。FBの中核物流拠点である「東HUB」(千葉県船橋市、「MFLPⅡ」内)に隣接する「MFLPⅢ」で今年1月にパーツセンターを開設。今夏には、同所へFFのパーツ製品も移管する。庫内には自動倉庫型ピッキングシステム「AutoStore(オートストア)」を採用して省人化と作業生産性の向上を図るほか、400ヵ所のデポロッカーへの発送には施設1階に入居する佐川急便のネットワークも活用する。
さらに、23~24年度をメドに移転を検討する、FFの輸出入拠点「横浜輸出センター」(横浜市金沢区)では両社製品の海上コンテナ混載や輸配送の共同化につなげる考え。同センターは現在、多層階建ての倉庫を使用しており、ワンフロアオペレーションが可能な施設に移ることで倉庫使用面積は現行の約3万5000万㎡から2万8000万㎡に縮小できる見込みにある。省スペース化に加え、自動化機器の導入による省人化を進めるとともに、停電対応の免震構造施設への入居でBCP対策の強化も図る。
倉庫拠点の統合としてはこれまでにも、関西のFBメイン拠点である「西HUB」(大阪市港区)にFFの地区倉庫である茨木倉庫を統合したほか、航空貨物を扱う「成田輸出センター」(千葉県成田市)を新設倉庫に移転させ、FBとFFで集約するなどの施策を講じ、倉庫スペースの削減や共同配送への寄与など成果を挙げている。
配送の共同化へ「GENESIS」活用
配送面では、FBのネットワークにFFの荷物を積み合わせる共同化をさらに推進する。FB製品の配送では、配送管理システム「GENESIS」でトラック動体管理や最適配送ルート組み、最適拠点配置のAI分析などを行っており、同システムにFF製品の情報も対応させることで共同配送を最適化し、トラック積載率の向上を図る。
また、今年2月に東京都品川区大井から移転・開設したFBの配送拠点「城東倉庫」(江東区新木場)にも、FFの配送拠点機能を持たせる予定にある。城東倉庫では、最もオフィスが集中し、納品先が密集する「千・銀・港(千代田区、銀座、港区)」への配達を担当。同所の開設で配送距離を短縮するとともにトラック積載率のさらなる向上と車両回転率の改善、およびCO2排出量削減を実現する。
同様の配送最適化への取り組みを大阪エリアでも行う一方で、名古屋、福岡、札幌、仙台エリアの配送拠点では、同業他社との共同化に向けたデータシェアリングにも注力する。原田達蔵・常務執行役員は「GENESISを使いながら、フィジカルインターネットの考え方で最適な配送網を構築したい」と話す。
長距離輸送でも2社製品を混載
長距離輸送においても、FBの輸送網へのFFの統合を加速させる。これまでも、FBが各HUB倉庫の輸入在庫(機械、消耗品、パーツ)を地区倉庫へ移送する際の幹線トラックがFFの拠点に立ち寄り、同社の製品を混載することで積載率を高めてきた。こうした共同輸送をより広げるため、両社の東西の在庫を中核拠点へ極力集中させ、積み合わせの幅を拡大していく。併せて、トラックへの積載方法においても、富士フイルム富山化学が設計した輸送用機材を活用して2段積みとすることで、積載効率を上げている。
一連の施策により、幹線便の大型トラックの積載率は以前の40%から75%まで上昇しており、「すべての長距離輸送でほぼ満載に近い状況」と富士フイルムHDの大貫武了・経営企画部物流グループ長。課題は、大型設備機器中心のFBと小型製品が多いFFで貨物の荷姿が異なる点だが、FFL内の設計チームが最適な組み合わせを検証しながら、積載率向上を支援している。
物流共同化促進へシステム刷新も寄与
物流DX(デジタルトランスフォーメーション)も推進するなか、システム面では、東HUBのパーツセンターより、WMS(倉庫管理システム)をクラウド型へ移行する計画にあり、今後、同システムを他の倉庫にも展開していく。これにより、Saas・Maasとのデータシェアリングが可能となり、幅広いプラットフォームに対応させることができる。作業効率化のみならず、荷物のマッチングなども行えるようにし、共同物流の拡大につなげていく。
DXとしては、先述のオートストアをはじめ、各現場への自動化機器の導入も進める。20年にはFFの「吉田流通センター」(静岡県吉田町)で自動フォークリフト2基を稼働したほか、21年には東HUBでトラックバースへのパレット移送にZMPの自動搬送機(AGV)8基を採用した。同所ではMFLP船橋のテナントサービスである、バース予約システム「MOVO Berth」も有効活用し、トラック待機を最小化するとともに、バース管理作業を大幅に削減。将来的にはAGVとも連携させていくという。
地方港の利用を推進環境・BCP対応に
2社の物流統合と並行してFFLが注力しているのが、陸送距離の短縮とBCP対応の強化を目的とした地方港の活用だ。首都圏では2年前より、東HUBの輸出入で千葉港の利用を開始し、京浜港では1日1・5ラウンドだったドレージ輸送の回転を4ラウンドへ増やすことに成功した。「トラックドライバー不足の解消にはドレージの回転率向上が重要だ。今後は東京港のゲートオープン時間の延長なども期待している」と三ツ井社長は指摘する。
FFとFBの物流拠点「福岡HUB」(福岡市博多区)では、中国・ベトナムからの輸入拠点としての機能拡大を図るべく、博多港の利用を検討する。これにより、大阪からのトラックによる長距離輸送の解消を図る。今後は千葉港や博多港、清水港に加え、富山港、熊本港、鹿児島港などを結ぶ内外航船も積極的に活用する方針。使用港の分散はBCP対策としても有効な施策だが、「そもそも船が寄港しないことには利活用できず、各自治体にはぜひ荷主と船社双方のモチベーションアップを進めてほしい」(同氏)と要請する。
三ツ井社長は「FFとFBの物流共同化には国内に限らず、オーストラリアをはじめアジア太平洋地域全域で倉庫の統合やコンテナ混載などでシナジーを発出させていく」と展望する。
(2022年3月24日号)