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【行政レポート】国交省が「倉庫シェアリング」指針策定へ

2021.11.30

6月に閣議決定された「総合物流施策大綱」で提起され、物流DXにかかわる目玉の施策として注目される「倉庫シェアリング」。国土交通省では来春以降、空きスペースを提供したい倉庫会社と、貨物を短期的に保管するために倉庫を利用したい荷主をインターネット上でマッチングさせるシステムの実証実験を実施。荷主と倉庫会社間だけでなく、倉庫事業者間で再寄託を行う際にも、マッチングシステムを活用することで、これまで以上の幅広いチャネルで再寄託が行えることを想定する。実証実験の結果を踏まえ、「倉庫シェアリング」の普及に向けたガイドラインを策定する予定だ。

EC市場の拡大で倉庫需要が増加

「倉庫シェアリング」の発想が出てきた背景には、コロナ禍でのEC市場の拡大がある。EC事業者などを中心に倉庫需要が急増していることから、倉庫を利用したい荷主と倉庫会社をインターネット上のシステムを活用してマッチングさせる仕組みを構築することで、倉庫内の遊休スペースの「シェアリング」を促進する。

荷主はマッチングシステムを利用することで、短期的に発生した倉庫需要に適したスペースを見つけ出すことができ、倉庫事業者は遊休スペースを有効活用することができる。また、マッチングシステムを提供する事業者にも新たな商機が生まれ、関係者の“WIN‐WIN”が期待できる。

実証実験では規格の標準化も検討

国交省では、倉庫の遊休スペースの効率的利用に関する実証実験を来春以降に実施予定。遊休スペース活用による倉庫会社の収益効果や、円滑なスペース利用のためのマッチングシステムの運用上の課題を検証する。荷主のニーズに合わせたスペース提供や契約の迅速化に向け、倉庫の床面積や有効高、耐荷重などの規格の標準化についても検討する考え。

実証実験は、マッチングプラットフォームを運営し、荷主と物流不動産の空きスペースのマッチングを提供する soucoや、価格・場所などの条件に基づく最適な倉庫の選択と見積もりから入出荷の進捗までを一元的に管理できるシェアリング倉庫サービスを展開する三菱商事のサービスを参考にしながら行う。

再寄託でスペース提供の頻度高まる

実証実験の検証結果を踏まえた上で、倉庫事業者向けに倉庫シェアリング促進のガイドラインを策定する。国交省の担当者は「マッチングを通じてムダをなくすことが倉庫シェアリングの目的。荷主はニーズが生じたときに短期間の倉庫利用がすぐに可能になるというメリットがある」と話す。

また、倉庫内スペースの規格の標準化が進めば、スペースの〝見える化〟が図られ、利用の活性化が期待できる。また、倉庫事業者間で再寄託を行う際、マッチングシステムを利用することで、スペース提供の頻度が高まり、エリアや既存のネットワークにとどまらず、幅広く再寄託が行えるようになる。

将来的には、倉庫作業員の労働力不足が見込まれるため、シェアリングやマッチングは人手不足への対応にも有効とみられる。急なスポット保管需要を空きスペースに振り分け、繁閑差を平準化することで労働負荷を軽減することも可能となるため、新「物流大綱」が示す「担い手にやさしい物流」の実現も期待される。
(2021年11月30日号)


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