JPR、共同輸送マッチング「TranOpt」リリース
日本パレットレンタル(JPR、本社・東京都千代田区、加納尚美社長)は21日、AIによる共同輸送マッチングサービス「TranOpt(トランオプト)」を一般向けに正式リリースした。業界を跨いだ異業種荷主企業の輸送案件をマッチングするサービス。今年8月まで実施した無償モニターによる利用では、マッチングした輸送経路の平均実車率が93%という高い数値を示したことを受け、正式リリースに至った。
近年、荷主企業同士の共同輸送の事例が増えているが、その多くが同業種での取り組みとなっている。同業種の場合、物流形態や季節波動が似通っているため、双方のメリットにつながる経路を見出すことが難しい傾向にある。その一方、異業種とは日常的な交流が少ないため、対話の相手を見つけること自体がハードルとなっている。
TranOptはこうした課題を解決し、従来にない異業種荷主同士の共同輸送を実現するサービス。多数の企業の輸送経路などの情報をデータベース化した上で、AIによって業界を跨いだ荷主企業同士をマッチングする。利用者はTranOptに自社のルート情報や積荷などの詳細な条件を登録。AIが希望条件を考慮したマッチングを行い、複数のマッチング候補を利用者に提示。利用者は共同輸送を行いたい相手にTranOpt上で通知し、共同輸送を実行する。
会員登録やサービス利用は無料。成約時に手数料が生じる成功報酬型を基本として、ニーズに合わせて定額利用型も選択できる。
JPRでは正式リリース前に、無償モニターによるトライアルを8月末まで実施。その結果、マッチング候補の平均実車率(総走行距離に占める積荷を輸送する距離の割合)が93%と高い数値を示した。また、独自のノウハウやモニター期間に得られた知見によって様々な工夫を凝らしている。例えば、「システム上でのマッチングから、実際の調整が進まない」といった課題に対しては、マッチング結果の表示順に相手方の熱意の高さを反映させる仕組みを構築した。
ルート組み合せを高速列挙、群馬大学と共同開発
JRRは今回のTranOptの開発にあたり、多数のデータベースの中から、効率が高い共同輸送の組み合わせを瞬時に列挙する技術を群馬大学と共同で開発し、コアエンジンとして搭載した。
数学分野で広く知られる「距離の公理」を活用し、背後に潜む不等式を上手く使うことで、正確性を損なうことなく探索する範囲を絞り込む。これにより、1台のトラックで3件の輸送を逐次的に処理する三角輸送、3件の輸送を混載して同時に運ぶ混載輸送に対応するとともに、効率性が高く協力することでメリットが得られる輸送ルートの組み合わせを瞬時に提示することが可能になった。
それ以外にも、共同輸送を行う際の運賃の予測値と、協力企業間での公平な費用負担を表示する機能を付加するなど、数学・数理科学分野の英知を活用している。
(2021年10月26日号)