メニュー

【巻頭レポート】コロナ禍で物流子会社M&Aが増加へ

2021.09.28

コロナ禍でサプライチェーンの変革や再構築が進む中、企業ロジスティクスを巡る動きが激しさを増している。荷主系物流子会社を対象にしたM&Aが引き続き増加傾向にあり、子会社を3PL大手などに譲渡して物流業務を外部委託する動きが加速。また、メーカーなどのグループ内で複数あった物流子会社を統合・再編して事業体制を強化するとともに、間接部門の効率化を図る取り組みも増えている。ドライバー不足や脱炭素への対応など、物流を取り巻く外部環境が大きく変わろうとする中で、企業ロジスティクスも変革の渦中にある。

大手荷主に物流子会社売却の動き

東芝ロジスティクスの買収に代表されるように、大手荷主企業が3PL大手などに物流子会社を譲渡する動きが目立っている。東芝以外でも、沖電気工業や長瀬産業、古河電気工業といった大手荷主で同様の動きがあった。

沖電気は昨年10月、DHLサプライチェーンと5年間のLLP(Lead Logistics Provider)契約を締結し、子会社「OKIプロサーブ」のロジスティクス部門をDHLが承継した。DHLは2013年にもコニカミノルタとLLP契約を結び、コニタミノルタ物流の事業を承継しており、今回も同様の方式で沖電気の物流を包括受託した。

物流子会社のM&Aで積極的な動きを見せているのが、3PL大手のセンコーとSBSホールディングス。センコーは昨年12月に化学専門商社である長瀬産業の物流子会社「ナガセ物流」の株式の過半数を取得したほか、同じ12月にアルミ総合メーカーであるUACJの子会社「UACJ物流」の株式66・7%を取得。センコーはコロナ禍においても、物流子会社だけでなく、総合卸・小売である寺内を買収するなどM&Aを積極的に展開している。

もうひとつの〝台風の目〟となっているSBSHDは、物流業界の耳目をひいた東芝ロジ買収に続き、今年1月には自動制御機器であるSMCの物流子会社「東洋運輸倉庫」の全株式を取得。さらに、4月には古河電工の子会社「古河物流」の株式66・6%を取得する契約を結び、年内にも株式取得を完了する。
このほか、明治は4月、チルド品を中心とした食品配送センター事業を営む100%子会社「フレッシュ・ロジスティック」の全株式を、食品物流を展開するアサヒロジスティクスに譲渡した。

拡大するEC物流でも新たな動きが

コロナ禍で市場拡大が進むEC関連でも、物流子会社を巡る動きが出ている。楽天グループは今年7月、同社の物流事業を分割するとともに、日本郵便が50・1%を出資して「JP楽天ロジスティクス」を設立した。楽天の物流センター事業の一部を新会社が請け負うとともに、日本郵便の配送ネットワークを活用した効率的なEC物流の展開を目指す。

また、住友商事系の物流会社である住商グローバルロジスティクスは、9月1日付で「ベルメゾンロジスコ」の株式保有比率を51%から66・6%に引き上げた。同社は17年に千趣会の物流子会社だったベルメゾンロジスコの株式を取得してグループ化。コロナ禍で拡大するEC需要の拡大に対応していくため、ベルメゾンロジスコが持つインフラをさらに高度化していくことでEC物流を強化していく。

SC再構築へ物流子会社の統合相次ぐ

サプライチェーン再構築の動きが高まる中、メーカーなど荷主企業内に複数あった物流子会社を合併・統合する動きも活発だ。トクヤマは昨年10月、徳山海陸運送とトクヤマロジスティクスを統合。今年1月には存続会社である徳山海陸運送の社名を「トクヤマ海陸運送」に変更した。

食品卸大手の国分グループ本社は、グループ内で物流事業を展開する国分ロジスティクスと日本デリカ運輸を統合。経営資源を統合することで、さらなる効率化実現とコスト適正化などを目指す。医薬品卸大手の東邦ホールディングスも、都内にある全額出資の運送子会社3社を統合し、社名を「共創物流」に変更した。

トヨタ紡織は10月1日付で、TB物流サービスと寿陸運の全額出資子会社2社を統合し、新社名「TBロジスティクス」としてスタートさせる。コーポレート部門の統合による経営効率化に加え、輸送リソース拡充による安定経営の確立を目指す。

また、いすゞ自動車でも、いすゞライネックスとアイパックという全額出資子会社2社を10月1日付で統合。存続会社はいすゞライネックス。いすゞグループの物流全般を担ういすゞライネックスと、海外向けKD部品の梱包事業を担うアイパックを統合することで、資材調達~梱包~出荷物流の一貫体制の構築を目指す。統合により新・いすゞライネックスの売上高は637億円(21年3月期実績の単純合計)まで拡大する。

進むドライバー不足、自社の〝足〟を確保する取り組みも

このほか、荷主企業の中には、ドライバー不足が進む中で、自社グループの〝足回り〟を強化する動きもある。日本山村硝子の子会社で外販向け3PL事業を展開する山村ロジスティクスは、大阪にある運送事業者2社の全株式を取得する契約を締結。今年9月に株式を取得し、運送事業を拡充した。

また、石油・LPガス販売のシナネンは今年6月に運送子会社「シナジートランスポート」を新設し、北海道地区での石油・LPG配送を強化している。
(2021年9月28日号)


関連記事一覧