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スポット保管で「倉庫シェアリング」推進=国交省

2021.07.13

国土交通省は貨物の短期的な保管の需要に対応するため「倉庫シェアリング」を推進する。遊休スペースを提供したい倉庫会社と、貨物を短期的に保管するために倉庫を使いたい荷主とをインターネット上のシステムを活用し、マッチングさせる仕組みを構築。来年度には実証実験を行い、課題を整理した上で、倉庫業界での普及促進を目指す。主にEC事業者、中小の倉庫会社の利用を想定し、民間のマッチングサービスとの連携を視野に入れる。

短期であっても空いたスペースを有効活用

6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~25年度)」では、AIやIoTを活用した物流分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進や、物流DXの前提となるデジタル化や標準化を推進するとともに、労働力不足に対応した生産性向上や物流業界の構造改革に取り組む指針を示した。生産性向上のための方策の一環として盛り込まれたのが、「倉庫シェアリング」だ。

国交省の倉庫産業担当者は「物流分野で連携やシェアリングなどがテーマとなってきている」としたうえで、倉庫シェアリングについて、「営業倉庫同士の協業関係が想定されるかもしれないが、要するにマッチングによってムダをなくすことが狙い。〝短期であっても空いているスペースは有効活用すべき、だからマッチングをしよう〟という考えだ」と説明する。

荷主の多くは比較的長期の保管寄託契約を営業倉庫と結んでいる一方で、EC市場の急拡大に伴い、一部のEC事業者が取り扱う家電や飲料、アパレル品など季節的商品について短期的な保管ニーズに対応できない場面も出てきていることを踏まえ、「短期の保管ニーズと倉庫の遊休スペースを結び付けることで、荷主と営業倉庫の双方がメリットを享受でき、マッチングサービスを提供する企業にも利益をもたらす〝WIN・WIN・WIN〟を目指す」という。

これまで営業倉庫間では伝統的に、再寄託契約などにより有効なスペース活用が行われているものの、とくに中小の倉庫会社は営業の人的リソースやネットワークが限られることもあり、その規模やエリアは限定的だった。一方でICT技術の進展により適切かつ広範囲なマッチングが可能となってきており、マッチングが倉庫会社のサービス品質の〝標準化〟を後押しする可能性もある。

物流DXの進展により、帳票やデータなどソフト面での標準化やパレットの規格化などハード面での標準化が加速するとともに、物流データと商流データをつなぐデータ連携基盤の構築が進むことで、営業倉庫のサービスも標準化が進展するとの予測がある中、マッチングにより提供できる倉庫サービスが個社の違いを超えて一定レベル以上の品質となり、荷主にとっての利便性が増大するとの期待もある。

22年度に実証実験、関係する3者で課題検証へ

EC事業者の保管ニーズと営業倉庫のスペース活用状況を効率的かつ迅速に組み合わせるには情報のデジタル化やスムーズな運用が必要なことから、国交省では2022年に荷主、営業倉庫、マッチングサービス事業者の3者が参加する実証実験を行う考えがあり、日本倉庫協会に対して実証への協力を要請している。

具体的な計画は未定だが、営業倉庫の既存スペースの利用可能性を調査するとともに、マッチングの効果やシステム運用上の課題を検証。マッチングプラットフォームを運営し、荷主と物流不動産の空きスペースのマッチングを提供する soucoや、価格・場所などの条件に基づく最適な倉庫の選択と見積もりから入出荷の進捗までを一元的に管理できるシェアリング倉庫サービスを展開する三菱商事などのサービスを参考にしながら検証を行うことになりそうだ。

国交省の担当者は「すでにトラック運送ではマッチングサービスが広がっている。倉庫でもそれが応用できれば、サプライチェーン全体の効率化につながる」と指摘。今後、国内全体の物流市場の大幅な拡大が望めないなかで、シェアリングやマッチングを活用することで「新しい倉庫を建てなくても既存倉庫で保管需要を満たせる可能性がある」という。
さらに、将来的に、倉庫作業員の労働力不足が見込まれるため、シェアリングやマッチングは人手不足への対応にも有効とみられる。たとえば、急なスポット保管需要を空いているスペースに振り分け、繁閑差を平準化することで労働負荷を軽減し、新物流大綱の主要テーマのひとつでもある「担い手にやさしい物流」の実現も期待される。
(2021年7月13日号)


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