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日陸、危険物物流でプラットフォーム戦略推進

2021.05.27

危険物・化学品物流最大手の日陸(本社・東京都千代田区、戸木眞吾社長)は、持続可能な危険物物流の実現を目指した「プラットフォーム戦略」を推進する。自前の車両、施設の充実に加え、同業他社と積極的に協業し、安定的で効率的、かつ高品質なサービスの提供を可能にする。プラットフォーム戦略はシステム連携も視野に入れており、リーディングカンパニーとして脱炭素社会やSDGsの要請に応える業界の基盤づくりを急ぐ。

倉庫や車両を“シェア”、システム連携も

日陸では昨年9月末に、4ヵ年の前中期経営計画が終了。最終年度後半はコロナ禍に見舞われたが、売上収入・経常利益ともに大きく伸長して着地した。同10月からスタートを予定していた新中計については、1年先送りし、社内の足場固めを行ったうえで、21年10月から3ヵ年の新中計を策定する。

重点戦略として取り組むのが、「プラットフォーム戦略」だ。危険物に限らず、物流業界の労働力不足は深刻化が予測され、とくに危険物を扱う有資格ドライバーの確保は難しくなってくる。旺盛で多様化した危険物の保管需要に応えるにも、危険物倉庫の新増設は日陸単独の投資では限界がある。

輸送営業拠点8ヵ所とISOタンクコンテナ4500基、エリア特性に応じた危険物倉庫9ヵ所を配備するが、安定性・効率性の観点から、他社との水平協業により車両やタンク、倉庫を“シェア”し、共存共栄を図る方針。「危険物物流の持続可能性やコスト低減を追求する」(栃木良治取締役常務執行役員事業本部長)という。

協業のツールのひとつがシステム連携だ。パートナー企業の中には危険物倉庫を初めて運営する企業もあり、日陸のノウハウを反映して開発したシステムをパートナー企業が導入することによって効率的な運営を支援。日陸は自前の拠点と同様に在庫データを一元管理でき、顧客の利便性も向上する。

危険物倉庫の運営について回るのが小口配送。そのネットワークもプラットフォームとして共有する。近年、特積み会社が危険物の引き受けを制限するケースが相次ぎ、小口化する危険物の輸送の遂行が困難になりつつある。日陸では危険物の小口混載ネットワークを構築中で、そのネットワークも“シェア”していく方針だ。

医薬品や半導体関連素材の分野に照準

脱炭素化など産業構造の変化を見据え、成長が期待される医薬品や半導体関連素材の分野により注力していく。石油化学産業の歴史とともに歩み、中間原料など石化製品の取り扱いを主体としてきたが、カーボンニュートラルに向けて需要の漸減が見込まれる中、「伸びる分野に照準を合わせる必要がある」。

フラッグシップとなるのが、昨年6月に稼働した土気流通センター(千葉市緑区)。消防法危険物に該当する医薬品の検品、ラベル貼付、仕分け作業等の流通加工業務を手掛け、GDP(医薬品の適正流通水準)の要件を満たした「流通センター」として、医薬品、化粧品などの高付加価値品、少量多品種貨物を中心に取り扱っていく。

一方、荷主の脱炭素化に貢献するため、CO2排出量を抑えた環境負荷の低い物流の構築もさらに加速させる。ISOタンクコンテナを用いた鉄道輸送は日陸の「代名詞」にもなっており、モーダルシフトを積極的に進めるとともに、FCV(燃料電池車)など次世代車両の開発動向も注視し、導入に備える。

ベトナムでマルチ型の危険物倉庫が9月完成

1月からは、山口県周南市徳山港町でISOタンクコンテナの洗浄・メンテナンスを行うデポ(写真)を稼働させた。関東(川崎)、関西(神戸)に続く国内3ヵ所目のデポで、洗浄、修理、法定検査を一体的に行うことができ、さらに危険物非該当の実入りタンクコンテナの保管も可能となっている。

こうしたハードへの投資以上に、今後重視するのがソフトへの投資だ。ドライバーのタブレット活用など現場でのペーパーレス化やデジタル化を進めるほか、新基幹システムへの移行によりオペレーションの可視化を図る。車両、コンテナ、倉庫の“シェア”をサポートするプラットフォームシステムも構築する。

容器のレンタル・リース事業のうち、ISOタンクコンテナのリースでは現在、4500基でサービスを提供しているが、汎用タンクからライニング加工など特殊タンクにシフトしていく方針。また、高付加価値製品を扱うためカスタマイズが必要な、1㎘~1・5㎘のスモールタンクのリースに注力していく。

海外事業への投資も加速する。将来的に売上高全体に占める海外事業の割合を3割程度に引き上げる目標。18年に現地法人を設立したベトナムでは、9月に危険物倉庫(1200㎡)が完成予定。多種多様な危険物に対応できる、同国初のマルチ型の危険物倉庫で、輸入品などを中心に扱っていく方針だ。
(2021年5月27日号)


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