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【ズームアップ】物流不動産に異業種の顔ぶれ続々

2021.04.27

物流不動産マーケットに異業種のプレイヤーが続々と参入している。総合不動産、電鉄、生保など以前から参入が増加傾向にあったが、コロナ禍のEC需要の拡大を受けて、さらに加速しつつある。用地獲得競争が激化していることもあって、ファンドに出資する形や遊休地提供と共同開発で新旧プレイヤーがタッグを組む例もみられる。

コロナ禍でも安定、賃料収入を収益源に

コロナ禍での安定的な成長を見込み、物流施設事業に参入したのが九州電力。川崎・東扇島で冷凍冷蔵倉庫を取得するファンドへ出資した。不動産アセットマネジメント会社である玄海キャピタルマネジメントが組成する私募ファンドに出資し、物流施設からの賃料を原資とした配当収入を得ることにより、電力事業以外の収益を獲得する。

旅客事業の業績悪化などコロナ禍で電鉄会社は厳しい環境にある中、JR西日本不動産開発は同社初めてとなる物流施設(完成イメージ)を兵庫県加古川市で開発する。延床面積3・2万㎡、地上4階建てのマルチテナント型物流施設で来年5月の竣工。同社は霞ヶ関キャピタルとも千葉湾岸エリアで物流施設開発プロジェクトを進める。

サンケイビルは物流施設の新ブランド「SANKEILOGI(サンケイロジ)」を立ち上げ、初の単独事業の施設「SANKEILOGI柏の葉」を千葉県柏市で4月に着工した。すでに大阪府箕面市で「箕面森町物流施設(仮称)」の共同開発を進めており、21 年6月の竣工に向け建設中。今後は自社ブランドを展開していく。

用地取得の環境厳しく、有効活用も進む

物流不動産マーケットへの参入では、ノウハウのあるデベロッパーとの「共同開発」で実績を積み、その後、単独開発に移行。現在主力といわれるプレイヤーも参入当時は共同開発からスタートしているケースも多い。プレイヤーの相次ぐ参入により用地取得の環境が年々厳しくなっていることも、“果実”を分け合う共同開発を後押ししているようだ。

IHIは三井不動産と共同により神奈川県綾瀬市で延床面積5万8700㎡のマルチテナント型物流施設を建設し、22年6月に竣工予定。周辺への圧迫感を軽減し、従来の物流施設のイメージを刷新する外観デザインを採用し、屋上にドクターヘリポートを整備。緊急救命体制に貢献するなど社会インフラとしての新たな特色も打ち出す。

芝浦機械も国内外の生産拠点再編に伴う相模工場の一部敷地の有効活用の一環として、三井不動産と共同で物流施設の事業化に向けた検討を開始すると発表した。事業スキーム等の詳細は両社共同で検討を進めていくが、神奈川県座間市で約6万2810㎡の施設について23年秋頃の操業開始を予定するという。

CBREによると、ECや物流施設の自動化・IT化を背景にコロナ禍でも堅調な物流施設需要が続き、首都圏での大型賃貸用物流施設の空室率は過去最低水準をキープしている。21年に竣工する物件についても首都圏、近畿圏とも6~7割超の内定率となっており、そうしたことも新規プレイヤー参入を後押ししているようだ。
(2021年4月27日号)


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