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標準運賃告示から1年、試される“本気度”

2021.04.22

低迷するトラック業界の運賃の是正を目的とした「標準的な運賃」の告示から4月24日で1年となる。新型コロナウイルス感染症の拡大で景気低迷の逆風が吹く中、荷主との運賃交渉が進まず、2月末時点の運賃変更届出状況は全国で約6%。東京都トラック運送事業協同組合連合会のアンケートによると、標準運賃の交渉を行った事業者はわずか8%にすぎない。2024年3月末の告示の時限が刻々と迫る中、トラック運送事業者の“本気度”が問われてくる。

コロナ感染拡大と景気悪化で厳しい船出に

18年12月に成立した改正貨物自動車運送事業法では、24年4月からトラック運転手に時間外労働の罰則付き上限規制が適用されることを踏まえ、ドライバーの賃金を含めた待遇を全産業並みに是正するため、トラック事業者が適正な利益を確保する「目安となる運賃」として標準的な運賃が国土交通大臣により告示された。

しかし、昨年4月の告示の時期がコロナ感染拡大や景気悪化のタイミングと重なり、荷主との交渉は厳しい船出となった。今年2月末時点で、標準的な運賃告示制度に基づく運賃変更届出件数は全国で3460件で、事業者数5万6990者のうち6・1%。1月末の4・7%よりも1・4pt上昇したもののいまだ1割の水準に届いていない。

荷主と「交渉しない・できない」が6割超

東ト協連が組合員を対象に実施した運賃動向に関するアンケート調査結果によると、「標準的な運賃」の荷主への交渉状況では、「交渉しない」が44・6%と全体の約半数を占め、「交渉できない」と合わせると62・8%にのぼった。一方で、「交渉した」はわずか8・1%にとどまっている。
「交渉しない・できない」と回答した理由は、「荷主企業が制度を理解していない」が36・9%、「今後の取引を断られる可能性がある」が20・8%。最近半年間の運賃料金の収受状況では8割が「特に変化はない」と回答するなど、“宅配危機”を契機とした近年のトラック運賃の値上げ基調は踊り場に差し掛かったことがうかがえる。

物流コスト上昇、需給の緩みで値下げ圧力も

コロナ禍で業績が悪化している荷主からは、「取引先のトラック事業者に仕事を振り分けるだけで精一杯で、値上げを受け入れる状況にない」との声も聞こえてくる。また、世界的なコンテナ不足による海上運賃高騰で物流コストが上昇し、需給が緩んだ陸上輸送での値下げ圧力も強まっており、運賃交渉では荷主の強気の姿勢もみられるという。

全日本トラック協会では今年度、標準的な運賃の普及推進運動を通じ、8割程度の事業者の届け出を目指すという。ただ、国交省では「荷主との運賃改定交渉を行ったのちに届出るというプロセスを踏んでいただきたい」(秡川直也自動車局長)というように、「交渉なき届出」には慎重なスタンスがうかがえる。

コロナ禍では、海上輸送、航空輸送は需給のひっ迫を背景に運賃の高騰が続く。一方、トラック輸送は荷主との中長期契約運賃は横ばいで、スポット運賃は昨年6月を底に回復がみられるが、19年秋の水準には届かない。需給が緩むと価格競争に陥りやすい業界構造も、標準的な運賃のレベルとの乖離が埋まらない要因となっている。
(2021年4月22日号)


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