JR貨物、ブロックトレインの新設加速
JR貨物(本社・東京都渋谷区、真貝康一社長)は、物流事業者や荷主企業が貨物列車を往復で専用的に利用する「ブロックトレイン」の新設を加速する。3月13日からスタートするダイヤ改正を機に、福山通運、西濃運輸の特積み事業者向けに2本のブロックトレインを新設。コロナ禍にあっても堅調な幹線輸送の需要を取り込む。同社では今後10年間の経営方針を示した長期ビジョンでもブロックトレインの拡大を打ち出しており、〝往復買い切り方式〟が特長のブロックトレインを増設することで、収益拡大や安定化につなげる考え。
福通4本目、西濃2本目の列車新設
福山通運が利用するブロックトレイン(写真)は3月23日から運転を開始。発着は安治川口駅~盛岡貨物ターミナル駅の往復で、運転距離は1088㎞。JR貨物が設定しているブロックトレインでも最長距離となる。列車編成は20両で、輸送量は1列車当たり31ftコンテナで40個(往復80個)。関西~東北間を定期運行することで、恒常的に続く長距離幹線ドライバー不足に対応するとともに、カーボンニュートラルの実現を目指す。同列車の運行による年間CO2排出量の削減は1万3153tとなる。
福山通運によるブロックトレインは今回で4本目となる。2013年に東京タ~吹田タ間で1本目となる「福山レールエクスプレス号」を運行開始して以降、15年に2本目(東京タ~東福山駅)、17年に3本目(名古屋タ~福岡タ)と順次増やしている。
西濃運輸が利用するブロックトレインは3月29日から運行開始。名古屋タ~福岡タ間の826㎞を往復利用する。今回の西濃の利用方式は24両編成のうち16両分を専用的に借り切る「混載ブロックトレイン」となり、残り8両は一般利用となる。西濃分の輸送量は31ftコンテナ22個・20ftコンテナ10個で、往復では31ftが44個、20ftが20個となる。同列車の運行による年間CO2排出量の削減は5722t。運行形態は、西濃が日本フレートライナーに委託し、同社が貨物列車への積載を担う。
西濃のブロックトレインは今回が2本目。18年に吹田タ~仙台港駅間で「カンガルーライナーSS60」を設定し、関西~東北間における幹線輸送の一部を鉄道にシフトした。今回は中部~九州間の幹線でのシフトに着手する。
「専用列車」から呼称を変更・統一
JR貨物にとって、今回の2本の運行開始によりブロックトレインは10列車となる。04年に佐川急便向けにスーパーレールカーゴを東京~大阪間で運行したことを皮切りに、通運事業者向けのスーパーグリーンシャトル列車(みどり号)、トヨタ自動車向けのトヨタロングパスエクスプレス(トヨタ号)などを運行している。
また、これまでは「専用列車」という呼称だったが、今回の新設を機に名称を「ブロックトレイン」に統一。17日の定例会見で真貝社長は「今後は、列車全部を1社が借り切る専用ブロックトレインと、列車の一部を借り切る混載ブロックトレインの2類型で展開していく」と述べた。特積み事業者の利用が増えていることについては、「宅配便を含めた積合せ輸送は、EC需要の高まりもあってコロナ禍でも堅調な鉄道利用が続いている。(福通、西濃以外の事業者からも)引き合いを多くいただいており、今後、ダイヤ改正の機会などを捉えて拡大を検討していきたい」と語った。
同社では今年1月に発表した「JR貨物グル―プ長期ビジョン2030」でも、ブロックトレインの拡大を打ち出しており、ESG経営やドライバー不足の観点から今後高まるとみられる特積み事業者からの鉄道シフトニーズに応えていく。
(2021年2月25日号)