商習慣見直しやデジタル化不可欠=経済同友会シンポジウム
経済同友会(代表幹事・櫻田 謙悟SOMPOホールディングスグループCEO社長)は12日、「持続可能な物流を考える~物流クライシスを見据えて~」と題し、物流の抱える課題をテーマにシンポジウムをWeb会議方式で開催した。
経済同友会「物流改革を通じた成長戦略PT」委員長の山内雅喜氏(ヤマトホールディングス取締役会長)が司会を務め、パネリストにはキユーピー上席執行役員ロジスティクス本部およびIT・業務改革推進担当の藤田正美氏、ラクスル代表取締役社長CEOの松本恭攝氏、ローランド・ベルガーパートナーの小野塚征志氏が出席した。
山内氏は、「労働力不足とともに小口多頻度化が進む中、物流の危機的状況はいまだに続いており、持続可能な物流の実現にはデジタル化や標準化の推進が不可欠だ」とあらためて強調。「物流企業にとどまらず、荷主企業の経営トップ層も物流の危機的状況への理解を共有し、商習慣の見直しやデジタル化投資を推進することが必要となる」と表明した。
デジタル化の前提となるのは標準化
シンポジウムでは、はじめに小野塚氏が基調講演を行い、第4次産業革命に対応した「ロジスティクス4・0」では、物流のデジタルトランスフォーメーション(DX)により省人化と標準化がより一層進展すると明言。高度化するサプライチェーンに対応した物流では、輸配送、保管、梱包、手配など物流業務の基本オペレーションは装置産業化すると強調し、今後はロジスティクス4・0に適合した物流ビジネスの構築が必要だとした。
続いて山内氏が、物流生産性の向上に向けデジタル化が急務であることを再確認した上で、デジタル化推進策についての議論を呼びかけた。
キユーピーの藤田氏は、物流プロセスのデジタル化とともに、リードタイムの1日延長や検品レスなど商習慣を見直すことが生産性向上には重要だとし、自社での取り組みについて説明。その上で「全ての個別事例に対応したデジタル化を行うには、膨大な設備投資が必要となり、実質的には困難だ。デジタル化推進には前提として標準化が不可欠」と指摘し、加工食品業界で進展する標準化の取り組みを紹介した。さらに、「労働力不足が続くことは明らかであり、過度にきめ細かな物流サービスを提供することは持続可能な物流の実現にとって有効ではない。業務そのものを標準化し、女性や高齢層など、誰でもが携われるようにしなければならない」と強調した。
“100台規制”で中小運送の再編を提案
ラクスルの松本氏は、中小企業が多い運送業界はデジタル化への投資余力が乏しいと指摘。運送事業のトラック5台規制を100台規制に転換し、中小の再編を促すことで、1企業当たりの利益率の向上を実現し、投資促進を図るべきと述べた。加えて「中国の長距離輸送に見られるように、マッチングプラットフォームを活用し、デジタル化に対応した個人事業主のドライバーと荷主を直接つなげる取り組みが必要ではないか」と提言した。また、物流DXを踏まえた物流産業では、デジタルスキルに長じた若い世代のマネジメント参画が重要だと述べた。
小野塚氏は「IoT、AIなどデジタル化推進が必要だが、第一段階は業務のデジタル化だ。事前出荷情報(ASN)の活用をはじめ、まず紙の伝票類をやめることから着手すべきだ」と述べ、「できる範囲から着実にデジタル化に取り組むことが重要だ」とした。
(2021年2月18日号)