次期物流大綱、「物流DX」基軸に=国交省
国土交通省は6日、次期総合物流施策大綱の策定に向けた有識者検討会(座長=根本敏則敬愛大学教授)の第5回会合を開き、骨子案を公表した。デジタルトランスフォーメーション(DX)により物流最適化を推進するとともに労働力不足に対応。また、近年頻発する大規模な自然災害への対応や新型コロナウイルス感染症対策を踏まえたネットワーク構築を目指す。12月4日の次回会合で大綱の本文案を検討し、同月22日には大綱案を決定する予定。早ければ年内に内閣に提言し、来年春頃に閣議決定される。
物流は協調領域に、構造改革も促進
骨子案では、物流を安定的・持続的に維持していくため、これまで競争領域とされてきた物流を協調領域としてとらえ直すとともに、構造改革などの促進により今後の労働力不足に対応する重要性を強調。感染症や大規模災害などの有事に際して強靱で持続可能な物流を構築することが必要であるとした。
施策方針として、①簡素で滑らかな物流の実現②担い手にやさしい物流の実現③強くてしなやかな物流の実現――の3つの柱を立て、ウィズコロナやポストコロナ時代に対応した物流政策を提示。
「簡素で滑らかな物流の実現」では、物流DXの推進や標準化によりサプライチェーン全体の徹底した最適化を図る。デジタル化や自動化・機械化とともに、商慣行の見直しや標準化を推進し、物流・商流データ基盤を構築する。「担い手にやさしい物流の実現」では、24年4月からのトラックドライバーへの時間外労働規制適用も見据えた労働力不足対策に取り組むとともに、内航海運の活用や共同物流・シェアリングの促進により物流構造改革を推進する。「強くてしなやかな物流の実現」では、強靭性と持続可能性を確保した物流ネットワークを構築。ポストコロナ時代に適応した非接触・非対面やデジタル化に対応したインフラ整備や、大規模災害時の各輸送モードを活用したリダンダンシー確保、鉄道・港湾などの物流結節点の充実や拠点の運用改善を図る。
〝物流危機〟克服へ施策の推進体制構築を
意見交換では、中小トラック事業者の立場から全日本トラック協会副会長の馬渡雅敏氏が発言。物流DX推進の重要性に賛意を示しつつ、中小事業者であっても自由に活用できるデジタルプラットフォームの構築が不可欠だと指摘し、「そうでなければ我々中小事業者は、DXを実現した大手事業者の下請けとして固定されてしまう」と懸念を表明した。
荷主からは、味の素上席理事食品事業本部物流企画部長の堀尾仁氏が、当面の課題解決と未来志向の取り組みの双方向の視点が大綱には必要だと述べ、「物流DXなどデジタル化に向けた取り組みは重点的に示されているものの、足元の〝物流危機〟を乗り越える緊張感に欠けている。このままでは現状の物流は変わらないのではないか」と指摘。物流改革の取り組みを「推進主体があやふやなままでは何も具体化しない」とし、大綱の施策の推進体制構築を提言した。
また、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)JILS総合研究所シニアフェローの佐藤修司氏は「デジタル化の前提となる標準化は不可欠だが膨大な作業が必要。それを担う推進機関を定める必要性がある」と主張した。
(2020年11月12日号)