UPR、新中計で売上高205億円へ
ユーピーアール(UPR、本社・東京都千代田区、酒田義矢社長)は16日、2020年8月期決算と今期スタートの「中期経営計画2025」の説明会をオンライン方式で開催した。新中計は21年8月期から25年8月期までの5ヵ年が対象。酒田社長(写真)は「この計画をやりとげ、しっかりと成長を実現する」と強調した。その上で「アフターコロナの時代に対応し、企業理念として掲げるソーシャル・シェアリング・サポーターとしてステークホルダーとの共有価値を創出する」と述べ、新中計に掲げた施策の推進を通じ、主力のパレット事業を成長ドライバーとしながら、アシストスーツ、物流IoT、ICT、ビークルソリューション(カーシェアリング等)など次世代対応型事業の規模を拡大する考えを示した。加えて「長期的方針として社会貢献を含む価値提供を主体的に行うソーシャル・シェアリング・プロバイダーとなることを目指す」と表明した。
20年8月期決算は売上高と経常利益が過去最高の実績を達成した。
「スマートパレット」を活用、日雑品需要の獲得へ
新中計では5年後の目標として、売上高205億円(年平均成長率10%)、経常利益28億円(同15%)、自己資本比率を常に30%以上、従業員1人当たり経常利益1000万円を掲げた。主要5事業のパレット(レンタルと販売)、物流IoT、アシストスーツ、ビークルソリューション、ICTをそれぞれ成長させるとともに、ベトナムを中心に海外事業の強化を図る。
物流事業分野では、主力のレンタル事業は20年8月期売上高85億5700万円を25年8月期には63%増の139億1800万円に成長させる。パレット輸送の拡大が継続する中、アクティブRFIDを搭載したスマートパレットや新型パレットを活用し、業界別のパレット輸送を推進。ターゲットとする業界は農産物、肥料、即席めん、家電、化学品、家庭紙、日用雑貨など。
同社は18年以降、家庭紙メーカー4社と協働し、統一パレットを活用した共同利用・回収事業を順調に拡大。来年以降、家庭紙での取り組みのノウハウを踏まえながら、日雑品業界でも需要獲得に注力する。同社が強みとするアクティブRFIDを搭載したパレットなどを活用する考えで、本格的なスタートは来年以降となる。現在10万枚のパレットを準備し、供給体制の整備を図っている。1年程度の期間を想定しながら一定の市場ニーズ獲得を想定する。一方、保管用パレットも需要の継続を見据え、着実な事業展開を継続する。保有枚数は毎年40~60万枚程度をコンスタントに増加させ、25年8月期までに北関東と中部地区に自社デポを新設する。
新たな取り組みでは日本パレットレンタルとの「パレット合同回収サービス」を今秋から開始し、今後拡大する方針。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、現在70~80%の稼働率を年間平均で5%向上させる。
販売事業はレンタル事業とのシナジーを継続しながら27億9400万円を5%増の29億2900万円に売り伸ばす。アシストスーツ事業は直販に加え、代理店による販売チャンネルの多様化を進める。感染症対応に配慮しながらの展示会・体験会も実施し、1億5000万円から約5・3倍の8億円に伸長させる。物流IoT事業は3億4200万円を約2・6倍の9億円へと成長を目指す。既存の追跡ソリューションの機能拡充に加え、スマートパレットシステムと連携した一元的管理ソリューションの投入や無人倉庫管理システムの開発などを推進する。ICT事業を3億4900万円から約2・9倍の10億円に拡大。既存の直販を強化することに加え、AIやビッグデータなど最新技術を活用することで遠隔監視サービスの高度化・高付加価値化を実現する。ビークルソリューション事業は5億3700万円から77%増の9億5100万円に拡大。カーシェアリングの拡大と併せ、空路・海路を含むモビリティサービスと連携し、MaaS事業への参画に取り組む。また、海外事業を含む全体の売上高は127億3200万円から61%増の205億円とする。
パレット化の動きをとらえ、好調な業績
20年8月期決算は、売上高は前期比9・1%増の127億3200万円、営業利益は49・9%増の11億3400万円、経常利益は37・0%増の13億8100万円、当期純利益は71・8%増の9億8400万円の増収増益となり、売上高と経常利益は過去最高を達成した。物流業界全体でパレット化の動きが進む中、ニーズを的確にとらえ、好調な業績を実現した。パレット保有枚数も順調に増加し、20年8月期現在で468万枚となった。
来期実績予想について酒田社長は「21年8月期は成長に向けた投資を強化していく方針。今後の成長に必要な先行投資を実施するため、意思を持って減益とする」と説明。21年8月期の売上高は135億5900万円(6・5%増)、営業利益8億8400万円(22・0%減)、経常利益11億1600万円(19・1%減)、当期純利益7億2500万円(26・3%減)と増収減益を見込む。
また、同社は執行役員制度の導入を発表。11月に開催する株主総会で正式決定する。
(2020年10月22日号)