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コロナ禍を踏まえ荷主に理解・協力を=国交省・秡川自動車局長就任会見

2020.08.06

7月21日付で国土交通省自動車局長に就任した秡川直也氏は同月31日に専門紙との記者会見を開き、就任に際しての抱負を語った。秡川局長はトラックの取引環境の改善に向けて「コロナ禍を踏まえながら、荷主に対して理解と協力を求める」方針を示した。また、タクシー事業者の飲食物宅配サービスは9月末に特例期限を迎えるが、「利用者から好評を得ており、タクシーのデリバリーを一律に否定的すべきでない」と述べ、期限延長や恒久化について前向きに検討を進める姿勢を見せた。秡川局長の会見要旨は次の通り。

業界が元気に事業をできるよう施策を実施

私は2014年4月から16年6月まで自動車局貨物課長を2年間経験した。トラック業界は大手・中小と事業者の規模も異なり、地域特性も様々だ。ひとつの業界ではあるが幅広い職域それぞれに課題があり、一つひとつ取り組ませてもらったことが思い出深い。自動車局長に就任し、国民生活に密接に関わる自動車行政全般に携わることができるのはありがたい。業界との意見交換を通じ、業界が元気に事業運営できるよう施策を打っていく。

貨物課長を務めていた時期も、トラックドライバーの長時間労働や、運送以外の荷役料金・待機時間料が適正に収受できていないなどの課題があった。こうした課題は荷主の理解と協力なしでは解決できない。厚生労働省とも連携し、荷主も参加する「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を中央と各都道府県で開催し、時短や生産性向上に役立つ優良事例を取りまとめた。今後もトラック業界と歩調を合わせ、改正貨物自動車運送事業法に基づく標準的な運賃の告示をはじめ、運賃・料金を適切に収受できる環境整備に取り組む。

取り組みの深化には、柔軟な発想が必要

直近はコロナ禍により荷主も事業にダメージを受けているので、荷主の状況を踏まえた上で理解と協力を求めていくことが必要だ。状況の変化に対応しながら取り組みを深化していく。そのために行政が柔軟な発想を持ち、業界のコンセンサスを得られれば「やってみよう」という前向きな考えが必要だ。

荷主側でも物流は国民生活や経済を支える非常に重要なインフラだという理解が広がっている。健全に物流を維持できるよう制度を活用しながら支援していく。そのほか、トラック分野では、東京港のコンテナターミナルにおける海上コンテナ車両の長時間待機も解消に向けて取り組むべきだと認識している。

タクシーのデリバリーは恒久化するか?

(9月末までとされるタクシーによる飲食物デリバリーの特例の延長または恒久化についての検討では)飲食物の宅配という比較的小さなニーズに運送のプロであるタクシーが応えたことは評価すべきだ。今回の特例はコロナ禍による柔軟な対応として実施したもの。タクシーの宅配を一律に否定的に捉えるべきではない。地域ごとの事情を踏まえながら旅客運送と貨物運送がうまく役割分担することが重要ではないだろうか。もう少し落ち着いた時点で期限後の対応についても柔軟に考えたい。

楽観的な精神を保ち、仕事に向き合う

仕事に向き合うために特別なモットーを持ち合わせているわけではないが、困難な案件であっても楽観的な精神を保ち、取り組んでいくことが大切だと日頃から考えている。自分の性格が〝のん気〟なのかもしれないが、周囲とよく話し合いながら事に当たれば何とか道は開けると信じている。自動車局が所管するのは国民経済に直結する重要な産業であることから、当局もコロナに負けず、しっかりと施策を進めていく。

秡川直也氏(はらいかわ・なおや)1965年3月4日生まれ、55歳。神奈川県出身。88年東京大学法学部卒。同年運輸省入省。航空局航空戦略課長、自動車局貨物課長、航空局総務課長、運輸安全委員会事務局審議官、大臣官房審議官(IR推進本部)などを経て7月21日付で自動車局長に就任。家族は妻と子供3人。趣味はゴルフ。
(2020年8月6日号)


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