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「プロテクトBOXアロー」を7月から全国展開=日本通運

2020.07.14

日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は7月から、企業間物流を対象とした中小口の混載輸送サービスであるアロー便で、新開発の輸送器材「NEX‐NET プロテクトBOX(写真)」を使った新商品「プロテクトBOXアロー」の本格運用を開始する。混載輸送は一般的に、貨物の積み替えが複数回あることから、貸切輸送に比べて貨物の汚破損などの輸送品質面で劣る場合が少なくないが、新サービスではプロテクトBOXで貨物をガードしながらユニット化された輸送を実現。高い輸送品質を保ちながら、顧客の梱包資材のコストダウンなどに寄与する。同社では当面、保有する1200基のプロテクトBOXのうち、600基をアロー便に投入して全国主要都市間でネットワークを構築。需要に応じて投入基数を順次増やしていく。

全国主要都市にSPを配置し、BOXをコントロール

「プロテクトBOXアロー」は今年4月から東京、横浜、名古屋、大阪の各エリア間でサービスを開始しているが、7月から対象エリアを全国に拡大。東名大に加え、札幌、仙台、広島、福岡など全国の主要ブロックにストックポイント(SP)を設けてプロテクトBOXを配備。本社が逐次、偏在などが起きないように器材繰りをコントロールしていく。運賃料金は分かりやすいパッケージ料金で、例えば東京~大阪間であれば1基当たり1万1000円(税抜き)。2基以上であればさらにお得な複数基の割引制度もある。

汚破損を防ぎ荷受けNGをゼロに、資材コストも削減

新開発の輸送器材である「プロテクトBOX」は昨年9月から運用を開始。岐阜プラスチック工業と共同開発したもので、強固かつ軽量なハニカムコア材により貨物を汚破損から防ぐ。内寸は幅1039㎜×奥行1043㎜×高さ843㎜で、最大積載重量は350㎏。プロテクトBOXを使用することで、上積みや積み重ねが困難な貨物でもトラックの荷台やコンテナでの2段積載が可能となり、積載効率の向上が実現する。また、パレットと側壁が一体仕様となっており、一人でも簡単に組み立てが可能。使わない時や回収時には折り畳むことでコンパクトに収納することができる。

プロテクトBOXの最大の特長は、貨物の汚破損を限りなくゼロにできること。同社のネットワーク商品企画部の佐久間啓文部長は「お客様の貨物のダメージに対する意識は非常に強く、外装の段ボールの角が少しへこんだだけで荷受けNGになる場合も多い。プロテクトBOXを使えば輸送中の貨物へのダメージがほぼゼロになり、汚破損を理由に納品時の荷受けを拒否されることがなくなる」という。

また、梱包の必要がなくなることも大きなメリット。パレット輸送の場合、パレットに積まれた貨物をストレッチフィルムで巻いたり、〝角あて〟で補強する必要があるが、同部の田村秀二専任部長は「ストレッチフィルムを巻く手間がなくなり、資材費も削減できる。現場では使用した梱包資材の処理に困ることも多いが、廃棄物削減にも寄与する」と説明する。同部の石田史隆課長は「1パレット分の貨物を梱包するのに500円前後の資材費がかかると言われているが、プロテクトBOXを継続的に使用することでコストメリットが出ることに加え、現場での作業負担の軽減にもつながる」という。

すでに、トラックや鉄道コンテナ、国内航空輸送など国内輸送の各分野でプロテクトBOXの利用が始まっているが、「パソコンなどの精密機械や電気製品などで利用が増えている。また、珍しいところでは、全国を巡回展示するジオラマの輸送でプロテクトBOXを使ったところ好評を得た」(佐久間氏)。さらに、「外装箱のまま店頭に並べる商品などは、外装箱に荷札を貼ることができないため、プロテクトBOXに収納して輸送したいという依頼も増えている」(田村氏)という。施錠ポイントを封印環でロックすることもできるため、セキュリティの向上にもつながる。

ユニット化で輸送モード選択が自由に、BCPに寄与

プロテクトBOXを輸送単位と捉えることで、輸送モードを自由に選択・転換できることも大きなメリットにつながる。「近年、自然災害が多発しており、トラックや鉄道コンテナ、内航コンテナ、航空など輸送手段をフレキシブルに選べることはBCPにとっても非常に重要となっている。プロテクトBOXでユニット化すればそれが可能になる」(佐久間氏)。平常時でも、ロットが少ないときは1個から輸送可能なアロー便で、ある程度ロットがまとまれば12ftコンテナでといった形で、状況に応じて輸送モードを変えることが容易になる。

「現在は新型コロナウイルスの影響でドライバーの労働需給は若干緩和しているが、長期的に見れば必ず不足する。そうなれば、今までのようなバラ荷役は難しくなる。長期安定的に輸送力を確保していくためにも、プロテクトBOXをひとつの輸送単位にして物流生産性を向上していくことが、ホワイト物流の観点からも重要になる。また、将来の荷役作業の自動化にも対応しやすくなる」(同)と指摘する。
日通では、まずはアロー便でプロテクトBOXの利用を普及させた上で、モードを超えた国内輸送ネットワークの強化を図っていく。
(2020年7月14日号)


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