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国交省が標準運賃原案を説明=全ト協・理事会

2020.03.10

国土交通省自動車局の伊地知英己貨物課長は5日の全日本トラック協会(坂本克己会長)の理事会(写真)で、2月26日付で運輸審議会に諮問した標準的な運賃の告示原案についての考え方をあらためて説明した。告示の時期について「答申が出た段階で告示するが、早くても4月末」とし、審議の行方に関し「これまで他の認可運賃を審議した際に、下がることはあっても上がることはなかった――と聞いている。この原案を維持できるよう説明を尽くしていく」と強調した。

「距離制」と「時間制」に基づく運賃表の設計方針では、「貸し切り(チャーター)便を前提とし、そうでないケースは標準的な運賃に依るものではない。認可運賃ではないため、上限、下限の幅は設けず統一的に一本の標準運賃を作成した。直近の平成11年の公示運賃は上限、下限を設定したが、今回示したのは、その真ん中の芯のところであり、平成11年の公示運賃と一概には比較できない」とした。

小型車(2tクラス)、中型車(4tクラス)、大型車(10tクラス)、トレーラ(20tクラス)と分けた車種についても、「各社が実際に導入した車両のコストに合わせて運賃の計算をやり直すことで、各社の“標準的な運賃”が算出される」との見解を示した。以前の認可運賃では、冷蔵車が2割、冷凍車3割の割増し運賃だったが、コストが変わらないため標準運賃では両方とも一律2割増しとした。

運賃と料金の考え方については、高速(有料)道路料金、フェリー料金、燃料サーチャージなどの料金に関し運賃表とは別に規定しており、「運賃表には入っていないことを明確にしている。荷役料や付帯作業料も同様」と強調。待機時間料は「本来料金であるため別建てにすべきだが、ずっと車に乗っているので運送の延長と位置付け、30分までは運賃に入れ、30分を超えた場合には標準的な料金を設定した」と語った。

適正な原価や人件費、帰り荷の取り扱いでは、「実際に輸送するコストを計算しており、元請けというよりは下請けの運賃でこれに手数料や委託料がオンされる」、「働き方改革や労働時間の上限規制、改善基準告示の改正を踏まえ、人件費ベースで3~4割上げる必要があるとして計算した」、「帰り荷がないという前提で計算し、帰り荷が確保された場合は、全体で割り引いて考える可能性がある」との考え方を示した。

全ト協の坂本会長は理事会冒頭、「全産業よりも2割長い労働時間、2割低い賃金を是正するのが標準運賃だ。トラック運送事業者は暖冬、消費税増税、新型コロナウイルスと“三重苦”の状況にあり、標準的な運賃の周知が必要。荷主に対しても経産省、厚労省、農水省とともにメッセージを発信してくれるという。事業者側も、抜け駆けして法令を守らずに安売りし、標準運賃の下をくぐる者が出てきたら何にもならない」と語った。

国交省の一見勝之自動車局長は、新型コロナウイルスによる感染症の影響について「東日本大震災、リーマンショックよりひどくなるとの見方もある。今回は日本だけでなく世界全体の景気が委縮し始めている。これから事業者と荷主との交渉が厳しくなると予想されるが、その下支えとなるのが標準運賃だ。『適正取引は進めざるべからず』であり、荷主に対する対応も行政がすべきことをしっかり行っていく」と強調した。
(2020年3月10日号)


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