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日本通運がRPA活用で100万時間削減へ

2020.02.20

日本通運(本社・東京都港区、齋藤充社長)は生産性向上と働き方改革を進めるため、IT・デジタル化の推進を強化する。定型的かつ単純な業務についてはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)への代替を促進することとし、2021年度末までに累計500台のロボットを導入し、作業時間を100万時間削減する目標だ。また、航空輸入業務ではAI‐OCR(AIによる紙媒体情報のデジタル化技術)を活用した効率化も推進。さらに、グループ全体の各業務を効率化するシステム整備も加速する考えで、今後3年間での投資額は数百億円相当を見込む。同社は13日に専門紙記者会見を開き、IT戦略や取り組みの概要を説明した。

同社は19年にIT重点戦略として「デジタルトランスフォーメーションの加速による、顧客提供価値の向上」、「デジタルオプティマイゼーションによる生産性向上・働き方改革の実現」、「グループ全体最適を実現する基盤整備」の3つを策定。施策を推進している。

顧客提供価値の向上に向けては、AI、IoT、RPAによるデジタル化の推進や利便性の高いシステム提供を行うことで、組織の垣根を超えたグローバルかつワンストップのシステム整備を進め、顧客に提供するサービス品質などを向上。また、デジタル技術を積極的に活用し、生産性向上や働き方改革を実現していく。
さらに、ITの活用によりグループ共有の経営ダッシュボードの構築をはじめ、財務データや輸送実績データを用いた顧客単位での実績管理、グループ各社のセキュリティレベルの高度化、ITガバナンスの強化など進める。

RPA導入で大幅な業務時間削減へ

18年4月からRPA導入をスタート。19年5月時点では複数の機器の制御と操作を行えるマスタロボット46台、末端の作業ロボットも含めると100台が稼働する体制を構築し、年間で6万751時間の削減を実現した。19年12月末現在では89台のマスタロボットが本格稼働し、末端を含めると371台が稼働するなど3倍強に拡充。年間で26万1698時間の削減を達成した。今年3月までにマスタロボットを110台にまで増強することで年間の削減時間40万時間を目標に掲げる。

RPA導入のうち、通運業務ではコンテナ発送貨物の着通運業者へのスポット発注と支払業務の自動化を実現。メール業務では添付ファイルを特定のフォルダに保存し、印刷を自動化した。作業計画関連ではEXCELの作業計画表ファイルをもとに、RPAが統合業務支援メニューの作業計画・完了報告のデータ入力を行う。
経理分野では納品書清算業務を自動化することで年間約2万時間削減。トレース業務ではアロー便や国内貨物をはじめ、協力他社を含めた輸送経歴の確認を自動化し、最新の輸送状況を取得して担当者に通知する。
現在、各業務部でRPA推進に取り組む担当者「RPAマスター」を養成。IT推進部とRPAマスターが連携し、業務標準化や運用ルールとフォーマットの統一化を行い、スムーズな導入推進に取り組む。19年度には165人のRPAマスターを養成している。

IT推進部の大林孝至部長はRPAの導入により「時短など生産性向上をはじめ、ノーミスによる作業品質の向上や作業工数の大幅な削減によるコスト削減が可能となる」と説明。加えて「単純作業を離れることで人間が高付加価値業務を行えるようになり、新たなビジネス開発の可能性も広がる」と強調した。

AI活用でINVOICE登録を省力化

AI‐OCRも導入し、従来は人が行っていた文字認識とデータ入力業務の代替が可能となった。各種帳票の書式をAIが蓄積学習し、多種大量な紙の帳票の入力処理を効率化する仕組みで、紙のINVOICE(出荷情報)をスキャナーが読み込み、AIがスキャン情報からデータを抽出し、エクセルマクロ化した上で基幹システムへ登録するようにした。
手始めに18年12月から航空事業支店国際貨物部通関センター(成田地区)に導入。続いて19年8月には同部通関センター(東京地区)で本格運用を開始し、今年1月からは中部空港支店へ導入した。19年12月末時点で成田・羽田の2拠点で月間時間削減率70%(概算)の効果が出ている。

輸入通関の前段では顧客から紙またはデータで受領していたINVOICEを基幹システム「NiCE」に登録する作業を実施。紙情報の場合は手入力しており、多大な時間を要するだけでなくミスも発生しやすく、ミス発生時はリカバリーに時間がかかるなど課題が生じていた
今後はさらなる効果創出に向け、導入地区や取扱件数の拡大とともに機能の拡充も検討している。
(2020年2月20日号)


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