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JILSが「ロジコンセプト2030」を発表

2020.01.16

日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は10日、恒例の新春会見を開き、遠藤信博会長(日本電気会長)と渡邉健二副会長(日本通運会長)らが出席した。遠藤会長は「2030年に向かって新たな社会を展望し、持続可能性を保ちながら、産業構造の変化に対応したロジスティクスの姿を示すため、このほど『ロジスティクスコンセプト2030』を取りまとめた」と発表。「現代は〝情報社会〟から〝データ社会〟へと転換しつつある時期であり、サプライチェーンの部分最適から全体最適へと転換するため、ICT(情報通信技術)の進化が可能としたビッグデータやAIの活用が最重要となる」と強調した。

会見の冒頭、遠藤会長は「わが国の産業界は緩やかな回復基調にあると思われるが、世界市場はGAFA、BATなどの巨大なプラットフォーマーが席巻している。こうした状況下で持続的に発展していくにはAIなどのテクノロジーやビッグデータを柔軟に活用し、新たなサービスやビジネスを創出することが重要だ」と指摘。加えて「2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)には、人間らしい雇用の促進、強靭なインフラ構築、持続可能な消費生産形態の確保などロジスティクスの高度化を実現するための重要な要素も含まれている」と指摘した。その上で2030年のロジスティクスのあるべき姿を描くことを目的にまとめた「ロジスティクスコンセプト2030」について「この新たなコンセプトを各界の皆様と共有し、その実現に向けて活動を展開していく」と意欲を語った。

全体最適実現で「データ社会」に対応

「ロジスティクスコンセプト2030」では、オープンなプラットフォームの構築により、全体最適なシステムを構築するには、①物流事業者にとっては適切なインフラ投資、②荷主企業にとっては標準的な用語や思考の枠組みに基づく標準化の拡大、③物流事業者・荷主の双方必要なものとして高度なロジスティクス人材――が不可欠であるとし、その実現に向けて7つの提言を盛り込んでいる。

遠藤氏は、「物流分野では、トラック積載率が約40%と低く、物流コストが約5%になっているなど、まだまだ改善の余地がある」と述べ、「近年はICTの著しい進化により、大量のデータを瞬時に取り扱えるようになった。それによりビッグデータをリアルタイムに活用し、AIに利用することもできる」と指摘。サプライチェーンの全体最適の実現に向け、基盤となるのは価値あるデータを広範囲に集約することだとし、「業際横断的にデータを集約し、それを共有資源(コモンズ)として保持することが重要だ」と強調した。

加えて、今後のロジスティクス分野での指標としてKPIとともに重要となるのはKGI(Key Goal Indicator=重要目的達成度指標)だと述べた上で、「サプライチェーンの全体最適の実現に向けて関係者が高いKGIを掲げて努力し、社会の持続可能性を確保していこう」と呼びかけた。

パレットでの荷役効率化や共同物流促進などが不可欠

渡邉副会長はそれを受け、持続可能な物流を維持・確保するには、生産性向上と人材の育成が必要だとし、「トラック運送業の生産性向上では、パレットを活用した荷役作業の効率化と待機時間の削減が重要だ。入出庫情報の事前発出などにより、車両の待機時間を削減する取り組みも重要だ」と強調。さらに、「効率化には、まとめてモノを運ぶことが求められる。共同輸送・保管、伝票やシステム、データの標準化、幹線輸送の帰り荷確保や中継輸送の実施など、荷主と事業者や事業者同士による広い意味での共同物流を行うことが重要だ」と述べた。その上で渡邉氏は「物流の持続可能性が大きな課題となっている今こそが標準化のチャンスだ」と強調し、行政の支援の必要性を訴えた。
(2020年1月16日号)


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