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標準的運賃は「タリフ」で提示

2019.12.10

標準的運賃は全国の運輸局ごとに運送距離と所要時間をもとに運賃表(タリフ)の形で提示する――。改正貨物自動車運送事業法の柱のひとつである標準的な運賃の告示制度の方向性が明らかになった。5日に開催された全日本トラック協会(坂本克己会長)の理事会で国土交通省自動車局が報告したもので、来年1月中に制度案を公表し、年度内に公布する。

運賃の地域差は運輸局単位で設定

理事会に出席した自動車局の伊地知英己貨物課長が標準的な運賃の告示制度の基本方針について説明した。それによると、制度の設計はタリフ表の形を中心として、国内運送の6割に相当する貸切トラックを前提に「距離制」だけでなく「時間制」も設定する方針。「上限や下限といった幅を設けることはせず、あくまでも標準的なものを1本示す」とした。

車種による区別については、2tの小型車、4tの中型車、10tの大型車の3つのクラスを主に設定。冷凍冷蔵トラックは「運賃割増」で設定し、トレーラについては「運賃割増」にするか別途定めるかは検討中であるとした。また、運賃の地域差に関しては運輸局単位で設定する考え。
標準的な運賃は原価計算に基づき設定するもので、あくまでも実運送事業者を対象に運用。原価に占める車両費の減価償却については、車両の使用年数やリース期間ではなく、法定耐用年数を適用する。人件費は労働条件改善のカギとなるため、「全産業平均並み」を反映する。帰り荷の運賃は実車率50%でコストが回収できるようにする。

30分を超える待機は「実質的に運送の延長」

また、標準的な運賃によって「十分な経常利益を確保できる水準になる」ことを想定し、荷降ろしなどの料金については、改正標準貨物自動車運送約款で運賃とは別建ての収受を規定していることから、特段定めない方針。ただし、高速道路料金や荷役料などは運賃と別建てで収受すべきことを告示制度にも添付する。待機時間については、30分未満は運賃に含まれるが、30分を超える場合は事実上運送の延長に当たると考え、1時間ごとに待機料金を収受するように制度内で規定する。

伊地知氏は「具体的な数値は現在議論しており、数値をあてはめ、告示制度の形に整えた後、国土交通大臣の諮問を受けて審議する運輸審議会に諮る」とした。これに関し、全ト協の馬渡雅敏副会長(松浦通運)は「標準的な運賃の設定では、外国人労働者は想定していない。日本人が働きたくなる賃金水準を可能にする運賃となるよう国交省に要望した」と発言した。

なお、理事会の開催にあたり坂本会長(大阪運輸倉庫)は「改正貨物自動車運送事業法の目的は、まじめな事業者が報われるようになることだ。改正法に基づき、無理な輸送依頼を行う荷主への対策を深度化し、法令を遵守しない事業者に対して規制強化や遵守事項の明確化が行われてきたところだが、いよいよ標準的な運賃の告示制度の創設に向けて準備が整ってきた」と挨拶。

続いて挨拶に立った国交省の一見勝之自動車局長は、改正事業法の3つの柱としてすでに施行された荷主対策の深度化、事業者に対する規制の適正化に続くものとして標準的な運賃の告示制度を挙げ、「これをしっかり実現していくことが目下の課題だ。制度公表後は様々な意見が出てくると想定するが、公正な評価を得られる制度につくりあげていく」と語った。
(2019年12月10日号)


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