メニュー

【レポート】物流不動産、プラットフォーマー時代へ

2019.11.26

物流不動産のプラットフォーマー化がいよいよ鮮明になってきた。各プレイヤーは“本業”である物流施設の開発・運営・機能の充実にとどまらず、スタートアップも含めた多様な企業・業種とのパートナーシップを加速(別紙図表)。AI・IoT・ロボティクス対応や人材・トラックのマッチングなど物流にかかわる様々なソリューションを提供するプラットフォーマーとして物流業界での存在感を高め、物流課題を主導的に担おうとしている。

企業や業種の枠を超えパートナーシップが加速

2019年9月、物流不動産業界でプラットフォーム拡大を目的とした新たなパートナーシップが発表された。それは物流不動産分野の日系メジャーである大和ハウス工業(本社・大阪市北区、芳井敬一社長)と三井不動産(本社・東京都中央区、菰田正信社長)がともに物流情報プラットフォーム「MOVO(ムーボ)」を提供するHacobuの「Shaing Logistics Platform」に参画するというもの。

すでに大和ハウスは子会社ダイワロジテックを通じてHacobuに資本参加しているが、三井不動産もこのほど同社と資本業務提携を結んだ。このプラットフォーム構想には、アスクル、日野自動車、ソニー系のファンド、日本郵政キャピタルも参画。IoTとクラウドを統合したオープンな物流情報プラットフォームで企業や業種の枠を超え、ビッグデータを活用した物流に関する社会課題の解決を目指すという。

日本最大の物流不動産面積を有する日本GLP(本社・東京都港区、帖佐義之社長)では、物流施設に出入りする車両や従業員の膨大なデータを活用し、各種テクノロジーを用いたソリューションを提供するためのプラットフォーム構築を目指し、18年3月に新会社モノフルの設立を発表。同社ではテレマティクス向けサービスプラットフォームを提供するスマートドライブ、損保会社との業務提携により、物流向けのサービスを提供する。

日本GLPではこれまでにも、物流用品の中古売買仲介のマテバンクと物流機器の買取・販売サービスについて、また、人材派遣のインテリジェンスと人材募集について業務提携するなど物流施設に付随するソフトのソリューションを提供してきた。新会社モノフルでは、物流向けモバイルサービス「monocom」やトラック受付/予約サービス「トラック簿」の提供をすでに開始。「トラック簿」についてはフレクトが提供するリアルタイム車両管理アプリ「Cariot」のサービス連携に関して合意した。

配送車両の調達、リース、人材派遣まで幅広く

物流不動産のリーディングカンパニーであるプロロジス(本社・東京都千代田区、山田御酒社長)では従来から、停電時に非常用電源で開閉可能な電動シャッターや物流施設用人感センサー付きLED照明の制御・可視化システムの開発などハード面での協業も目立つ。直近ではソフト面の協業にも力を入れ、ITを駆使してラストワンマイルの物流を担うスタートアップ企業、ウィルポートと業務提携し、テナントの配送支援に乗り出している。

また、物流施設内の人材確保と雇用定着を支援するため、従業員定着支援アプリ「テガラみる」を手掛けるテガラミルと業務提携。TSI・プロダクション・ネットワークとは物流分野における新サービス、次世代新技術の検証・導入について業務提携した。ロボットを活用したマテリアルハンドリングに適した施設設計の検討、アパレル向け次世代型物流プラットフォームの構築などに取り組む。

多方面にアライアンスを広げているのがシーアールイー(CRE、本社・東京都港区、亀山忠秀社長)だ。「世界の人とモノをつなぐ物流インフラプラットフォーム構築」を事業ビジョンに掲げ、直近では低温トラックリースのA‐TRUCKと資本業務提携したほか、次世代物流インフラプラットフォームを担う合弁会社設立に向けて家電量販のエディオンとの業務提携に合意した。

CREはこのほか物流会社と個人ドライバーのマッチングプラットフォームを提供するCBcloudと資本業務提携。EC事業者向けに物流システムシステムソリューションサービス「はぴロジ」を提供するブレインウェーブを子会社化。同社を通じオフィス エフエイ・コムと物流ロボティクス分野で業務提携を開始した。また、ツナググループ・ホールディングスとは新会社の倉庫人材派遣センターを設立している。

このほかオリックスが物流機器の販売・レンタルを手掛けるワコーパレットを子会社化するなど、物流不動産のソリューションビジネス展開に向けたパートナーの囲い込みが続く。ただ、各種スタートアップへの投資や業務資本提携の収益性、本業である物流不動産のテナントリーシングへの効果については、検証はこれからといったところもある。
(2019年11月26日号)


関連記事一覧