【ズームアップ】新潟運輸の女性専用「姫トラ」に注目集まる
新潟を起点に路線便事業などを全国展開する新潟運輸(本社・新潟市中央区、坂井操社長)の女性ドライバー専用トラック「姫トラ」が、物流会社や荷主の間で話題になっている。女性ドライバー自身がデザインした華やかなトラックのボディは納品先からも評判がよく、「私も乗りたい」と言われることもあるという。キャビン内も女性ドライバーの声を活かした、「働きやすさ」への様々な工夫が施され、日々の運転のモチベーションアップにもつながっている。
外装は「ハート」がモチーフ内装にもこだわり
「姫トラ」は新潟運輸が女性ドライバー専用に開発したトラック。特長のひとつであるボディのデザインは、コーポレートカラーであるシルバー(銀色)を基調に、キャッチフレーズの「まごころをお届けする」から「ハート」にちなんだ2種類を用意した。
ひとつは、新潟県の木である雪椿の花びらをハートに見立てた上品なデザイン。真っ赤に咲く大輪の花がシルバー地に映え、「まごころ」も「MAGOKORO」とアルファベット表記されている。もうひとつは、トラックの外装としては珍しい淡いピンク色を用いて、宝石のようなハートマークを描いた可愛らしいデザイン。雪の結晶がピンク地に白抜きで表現されているのも、雪国である新潟の会社ならではだ。
ヘッドライト上部にはそれぞれのモチーフに合わせたロゴも装飾され、細部にこだわったデザインとなっている。
キャビンの内装は両デザイン共通で、女性ドライバーの要望をもとに使いやすさを追及した。座席横に3段ボックス、背もたれ横に本棚を取り付けて伝票や安全ブックなどを整理しやすくしたほか、シフトレバーを半分に折り畳めるシャッシを選択したことで、運転席から助手席への移動を容易にした。
さらに、運転席の窓を全て覆えるカーテンを装着。配達などで制服が汚れた時にはカーテンを閉めて運転席で着替えることができる上、昼食などの休憩を車の中で過ごす際にも周囲の目を気にせずリラックスすることができる。
このほかにも、最新車両には窓ガラスへUVカットフィルムが取り付けられ、紫外線対策も完備。荷台のドア脇には手すりを備え付けて女性でも安全に荷室へ上れるようにした。
姫トラは、今年5月に横浜旭支店にピンク色の2t車を、柏支店に雪椿デザインの4t車を納車した後、6月には金沢支店に2t車、7月には藤枝支店にルートバン車、8月には五泉支店に2t車を導入。今後は、10月に東京支店へ2t車、11月に新発田支店へ2t車を導入する。さらに、来年にかけては新発田支店へ2台目、横浜旭支店へ2台目を4月までに納入予定で進めており、いずれは全女性ドライバーが姫トラに乗務する計画という。
今年5月に、1台目となるピンク色の姫トラのドライバーとなった横浜旭支店の開沼亜海さんは、「毎日のようにお客様から『かわいいトラックだね』『こんなトラックがあったんだ』と声を掛けてもらう。そうした話をしているうちにお客様との信頼が深まり、支店や会社にとっても良い方向に行っている」とし、「可愛いトラックに乗れてうれしいし、自分の車両に愛着もわく」とほほ笑む。
横浜旭支店の相田克己支店長も「トラックは男性のイメージが強く、交通事故などから悪いイメージもつきまといがち。姫トラでそうした印象が和らいでほしい」と期待を寄せる。
姫トラプロジェクトが女性同士の交流の場に
新潟運輸の「姫トラ」プロジェクトは、2017年11月に発起。人手不足でドライバーが確保できない店所も出始める中、女性ドライバーの積極的な採用と活躍に向けて取り組みを開始した。
まずは女性専用トラックの開発や職場環境改善への意見を募る会合を、18年1月に開催。当時、新潟運輸の集配ドライバー1300人のうち女性は12人で、当日は全国の店所から、業務などで集まれない社員を除く全女性ドライバーが集合した。他店所の女性ドライバー同士が顔を合わせるのは、この時が初めてだったという。
第1回会合では事前に女性ドライバーから募集していたトラックの外装デザインを2案に絞り、「姫トラ」の愛称も決めた。環境改善に向けては、トイレや更衣室の改修、男性向けの制服よりも一回りサイズが小さい女性向けの制服支給などへの意見も寄せられ、会社側で対応を進めているという。第2回の開催は今年5月に開かれ、今後も年1回ペースで開催していく。
会合そのものは年1回だが、姫トラプロジェクトを機に女性ドライバー同士で連絡先を交換し合い、グループLINEでは日々、仕事でのできごとや悩みなどメッセージがやり取りされている。開沼さんは「今まで他の支店の女性ドライバーのことを全く知らなかったが、同じ会社で同じ仕事をしているドライバーなので話が通じやすく、仲間がいることが心の拠り所になっている」と話す。
(2019年10月1日号)