【ズームアップ】鴻池運輸が大阪木津市場の食品加工場を公開
鴻池運輸(本社・大阪市中央区、鴻池忠彦社長)は18日、4月に大阪木津卸売市場内に開設した「食品加工場 KIZU process center」の見学会を開催した。加工場は、延床面積約1022㎡の鉄骨造・2階建てで、大阪港と関西国際空港から近い輸出に最適な立地で、高品質な食材の調達に特長がある大阪木津卸売市場の敷地内に位置。“切る・煮る・焼く・蒸す”などの幅広い調理方法と新たな急速冷凍技術を組み合わせ、多種多様な加工食品を1ヵ所で製造し、顧客の要望にワンストップで応える「多機能OEM食品加工場」として稼働している。2年後をメドに食品の衛生管理システム「HACCP」の認証を取得し、安心・安全な食品加工を目指す。
国内では高い品質基準が求められるコンビニや生協、機内食への市場参入を目標に据えると同時に、高付加価値の商品を開発する。ターゲットを独身または共働きの30代後半~50代男女のアッパーミドルからアッパークラスの顧客とし、全国のスーパーやデパ地下の食品売り場、ECなどを販路として計画している。輸出では、当面はシンガポールや香港を視野に入れ、海外のレストランチェーンなどの量販店や外食向けにPRしていく。
急速冷凍技術で鮮度を維持
設備面では、省人化・省力化の観点から魚のウロコ取り、3枚おろし、皮取り、スライス、真空パック包装などの機械を導入。最大の特長は、高濃度の塩水をマイナス21・3℃に凍結した「ハイブリッドアイス」を使用した急速冷凍技術。急速に活魚を冷凍することにより、解凍後のドリップを抑え、刺身でも活魚と同様な新鮮さを味わうことが可能となる。また、レシピ開発には、元公邸料理人を社員として採用し、現在までに和洋問わず多数の商品を開発している。
“物流の枠”を超えた事業展開へ
見学会の冒頭、鴻池運輸の佐藤隆夫常務執行役員は「2016年2月に水産卸組合様と大阪木津市場様から市場の活性化に関する相談があり、今回の事業化への検討がスタートした」と背景を語り、「生魚に関する取り扱いは素人だったが、物流の枠を超えた広範な業務の中で培ってきた流通加工や生産請負のノウハウを活用し、冷凍・冷蔵の保管機能と食材加工機能で市場の活性化に役に立てるよう勉強を重ねてきた」と振り返った。
また、加工場の最大の目玉である冷凍技術については、「鮮魚の肉質を変えることなく瞬間冷凍する『ハイブリッドアイス』は、従来の冷凍技術と比べて約20倍のスピードで対象物から熱を奪うことができる。再利用もでき、環境にも優しい。この瞬間冷凍技術と当社の定温物流技術をマッチングさせ、市場が求める鮮魚を年間通して安定供給できる体制を構築していく」と語った。
その後、関西中央支店大阪木津営業所の川嶋秀弥所長が加工場の事業コンセプトや開発中の商品などを紹介。「加工場で製造する加熱商品は完全調理味付け積みの冷凍食品。切り身の解凍も湯煎のみでそのまま食べられるため、忙しい方や高齢の方でもお手軽に魚を食べていただける」と説明。加工場の稼働状況については「日によって稼働率は変動するが平均するとだいたい60%くらい。年末から3月にかけては魚も増えてくるため、稼働率は上がると想定している。また、11月の『日本の食品輸出EXPO』に開発した商品を出展するため、商談次第では稼働率が変わってくるのではないか」と期待を示した。
見学会では、1階と2階の製造・保管・加工エリアを公開したほか、「ハイブリッドアイス」で生きた鯛を実際に急速冷凍した。その後は、加工場で取り扱う食品を実際に披露し、試食会を開催した。
(2019年9月24日号)