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荷主の“意識変革”が不可欠=国交省・松本物流審会見

2019.04.11

国土交通省の松本年弘物流審議官は9日、会見を開き、「総合物流施策大綱2017年度~2020年度」の中間地点を迎えるに当たり、成果と今後の課題について説明した。松本氏(写真)は「大綱の具体化を図るため策定した総合物流施策推進プログラムについて全99施策についてフォローアップとともに新たに7施策を追加した」と述べ、「物流事業の労働生産性を全産業並みに引き上げ、20年度には2割向上を図っていく」とした。また、「ホワイト物流」推進運動について、「トラックドライバー不足に対応し、安定的な物流を構築していくためには荷主の意識改革が不可欠だ」と強調した。

推進プログラムは概ね順調

2017年7月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)」が掲げる方針に基づき、持続可能で安定的な物流の実現に向けた方策を実施する「総合物流施策推進プログラム」の策定後1年が経過したことから、国交省・物流審議官部門では同プログラムを見直した。松本氏は「プログラムには物流大綱の具体化に向けて全99の施策を盛り込んでいるが、約1年間の取り組みの実施状況を検証したところ、概ね着実に実施されていることを確認した」と報告。その上で、「『物流大綱』の策定後2年弱が経過した現在、物流事業の労働生産性向上はいまだ〝道半ば〟だと考えている。さらなる引き上げは事業者の努力だけでは果しえない。サプライチェーン全体の観点に立った取り組みが必要」と強調した。そのためには「商慣習の見直しなど荷主が積極的に関与し、取り組まなければならない課題がある」と述べ、「持続的で安定的な物流を維持するためには荷主の意識変革が不可欠だ」と強調した。

同プログラムで示した物流効率化の取り組みの具体例として、荷主と物流事業者の連携・協力が重要との観点から、トラック輸送の生産性向上に向けて16~17年度に全国で実施したパイロット事業に基づく「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」の策定を挙げた。加えて、大手総合スーパーやコンビニエンスストアを中心に清涼飲料や賞味期間180日以上の菓子について納品期限の見直しが始まっていることや、ダブル連結トラックの活用促進に向けた特車通行許可基準の緩和と大手運送事業者連携による同車両を活用した共同運行のスタートについて、今後の拡大に期待を寄せた。

リードタイムの見直しなど荷主の積極的関与を

また、同プログラムには新たな施策を盛り込んだ。「ホワイト物流」推進運動の展開をはじめ、長時間労働是正に取り組む自動車運送事業者を顕彰する制度の創設、輸送品目別の荷待ち時間削減へ向けた方策の検討、トラック運送での女性・高齢者の活用促進など自動車運送分野の施策を解説。また、サプライチェーン全体に関わる物流・商流情報の〝見える化〟と〝データプラットフォーム(データ基盤)構築〟や、港湾の完全電子化の推進、空港の防災・減災対策などがある。

「ホワイト物流」推進運動については、国民生活や産業活動に必要な物流機能の大きな部分を占めるトラック輸送の安定的確保と経済のさらなる成長に寄与するため、「国交省をはじめ、農水省、経産省、警察庁など関係省庁が連携しながら、トラック輸送の生産性向上や物流効率化、女性や高齢者層を含む多様な人材が活躍できる働きやすい労働環境の実現に取り組んでいる」と表明。今後の課題として、「リードタイムの見直しや発注量の平準化、物流データの標準化を実現することが重要。これも荷主と事業者の相互協力の上でできることであり、ホワイト物流の運動を通じて、実現を図っていく」と述べた。

物流・商流情報のプラットフォーム構築については、「内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラムのひとつとして5ヵ年計画で実施していくものだが、パイロット事業を公募したところ応募案件が少なかったこともあり、関係省庁と協議しながら、研究開発計画の見直しを図っている」と説明。新たな計画の公表と新計画による事業の公募時期について明言は避けた。

物効法認定案件は138件、支援を継続

2016年に改正した物流総合効率化法(物効法)の施行後、約2年半が経過したことについて、「荷主や事業者を支援するため物効法の枠組みにより総合効率化計画の認定を進めており、3月末の時点で138件になった」と報告。注目すべき取り組みとして、コラボデリバリーと西濃運輸による建物内の宅配便物流の一元化、キユーピー・ライオン・日本パレットレンタルによる共同物流、日本マクドナルドなどによる拠点から店舗への配送での平準化・効率化、大手運送事業者によるダブル連結トラックの共同運行などを挙げた。松本氏は19年度も支援の取り組みを継続していくと表明。「物効法をはじめ、各種施策の推進により物流分野の労働生産性を全産業平均並みに引き上げることを目指し、20年度までに2割程度向上を図る」と述べ、「各種データに基づく生産性向上の度合は、最近の数字ではないものの16年度は前年度比で3・6%アップしている。今後も着実に施策を実施し、さらなる向上を図っていく」と表明した。
(2019年4月11日号)


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