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経済同友会が大胆な物流改革を提言

2019.02.07

経済同友会の「物流改革を通じた成長戦略委員会」(委員長=渡邉健二・日本通運会長)は5日、自家用トラックによる有償運送、外国人トラックドライバーの解禁などの具体策を盛り込んだ提言「経済成長と競争力強化に資する物流改革」を発表した。同日、都内で会見した渡邉委員長は「自動運転など物流の将来を見つめた時に、ある時点で規制などあり方を切り替えていく必要がある」と述べた。今後、提言を内閣府や国土交通省、経済産業省などに提出し、実現に向け働きかける。

物流版シェアリングエコノミー実現へ

今回の提言は、物流が深刻な人手不足を発端として破綻の危機に瀕していることを受け、持続的な経済成長と競争力強化に向けた方策を示したもので、委員会が約1年半、15回程度の会合を経て提言にとりまとめた。

具体策は「既存資源の有効活用や共有を図るための物流版シェアリングエコノミーの実現」と「先進技術活用や聖域なき国内制度改革」――の2つが柱。
まず「物流版シェアリングエコノミーの実現」では、現在、道路運送法で原則禁じられている自家用トラック(白ナンバー)による有償運送の解禁を求めた。具体的には輸配送手段の確保が困難な地域に限り、安全管理システムを導入した物流事業者を対象に、白ナンバートラックの有償貨物運送を認めるべきとした。

また、JR貨物の積載率が限界に近いことを受け、新幹線を活用した貨物輸送を検討すべきとした。まずはダイヤに余力がある九州、北海道、仙台以北の東北における中長距離輸送で実施する方向を示したのに加え、旧型新幹線車両を改造して、かご台車を積載できるようにするなど、客貨混載の手法であれば投資も少額で実現可能性が高いとした。

安全担保を条件に外国人ドライバーを活用

「聖域なき国内制度改革」では、外国人トラックドライバーへの在留資格の付与を提言。政府が進める新たな外国人材の受け入れに関する議論において、外国人トラックドライバーが議論の俎上にのぼっていないことを踏まえ、「トラックドライバーは単純労働ではなく技能労働」だと規定した上で、一定の基準を満たした安全運転支援システムを搭載した車両へ乗務するドライバーであれば、安全が担保できるため、在留資格を付与すべきとした。

営業用、自家用の区分のない時代がくる

5日に会見した渡邉委員長は、ドラスティックな提言内容になっているとの指摘について、「例えば自動運転システムが今後できあがった時に、物流がどうあるかを考えると、営業用トラックや自家用トラックという区分が本当にあるのかという根本的な疑問がある。そうした区分がなくなってくるのであれば、ある程度の時期から段階的に組み入れていくことが必要だ。トヨタ自動車が自家用車をシェアリングしようとしている時代であり、1台のトラックの中に色々な荷物が乗っていくのが当然の流れになってくる。末端で自家用が運ぼうが営業用が運ぼうが、最終的には同じになるのではないか。そうした将来を見つめた時に、ある時点から切り替えていくことが必要ではないか」との基本認識を示した。

また、外国人ドライバーの活用については「物流業界の中には色々な意見があるが、外国人の活用が必要だと言っている人も相当程度いる。(外国人で)人件費を下げるということではなく、ドライバーの数が絶対的の足りないのだから、それを埋めていく必要がある」と語った。

また提言では、実現に向けた推進体制にも言及。予算や権限を一元化する横断的組織を設置すべきとした。また、規格化やプラットフォーム構築は民間企業単独では実現できないため、官民連携での物流標準化団体を設立すべきとした。
(2019年2月7日号)


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