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ドライバーの「働きやすさ」を3段階で認証=国交省

2019.02.05

国土交通省は1月30日、労働環境改善に向けた経営(ホワイト経営)を行う自動車運送会社を入職希望者や荷主に推奨する認証制度の検討会(座長=野尻俊明・流通経済大学学長)の第3回会合を開催した。認証制度の名称は「運転者『職場の働きやすさ』認証制度」を仮称とし、4月上旬までに正式に決定する。4月から認証実施団体の公募を開始し、夏頃に決定したのち、年度内に運用を開始する。

業界上位2分の1以上の成績で「一つ星」取得可能に

検討会では4月上旬に制度の内容や認証評価基準を定めた報告書を取りまとめ、制度設計を固める。報告書には、認証審査のための必須項目・加点項目の区別や、加点項目の基準点(認証基準を満たすために必要な最低限度の点数)などを盛り込む。

項目や基準点については、2~3月にトラック、貸切バス、乗合バス、ハイヤー・タクシーを対象として1業界につき50社程度のアンケート調査を実施し、それを踏まえて詳細を決定する。

認証は「一つ星」「二つ星」「三つ星」の3段階。基準項目の成績ごとに一つ星は全事業者の上位50%、二つ星は上位25%、三つ星は12%が取得できるように設定する。

審査項目は制度内容が固まる4月の段階で確定するが、トラック事業者が一つ星を取得するためには、約30の必須項目の全てを満たす必要がある。労働基準関係法、道路交通法、貨物自動車運送事業法など法令遵守をはじめ、拘束時間、運転時間、休憩時間、休息期間、時間外労働時間などを一覧表などで管理していることが審査される。さらに、社会保険に適切に加入し、健康診断受診義務を履行していることや、時間外労働、休日労働、深夜労働などに割増賃金を支払っていることなども必須項目となる。

ドライバー志望者に働きやすい会社をアピール

国交省の担当者は、「これまでは仮称として、ホワイト経営認証と呼んできたが、認証項目の達成度により、一つ星から三つ星の3段階で認証するため、ホワイト認証を取得していなければブラック企業だとの誤解を招きかねない表現は認証制度になじまないという意見があった。一方で、わかりやすい『ホワイト経営』を名称に取り入れるべきとの声もあった」とし、「それを踏まえ、制度内容をより正確に表す名称を4月上旬までに決定することにした」と説明。その上で、「認証を取得した労働環境の良い会社はドライバーが集まりやすくなることが期待されるため、業界の長時間労働の改善につなげていきたい」と意義を強調する。

認証の有効期間は2年間。初回は一つ星のみを取得できるが、一つ星の取得から2年経過した後は、二つ星取得を経由せずに三つ星の取得も可能となる。

荷主や取引先からの信頼向上も期待

取得のメリットとして、取得企業は自社の働きやすさを中立的・客観的に求職者や荷主に対してアピールすることができるため、円滑な採用活動が行える。また、荷主や取引先からの信頼の向上にもつながる。取得企業は、車両やホームページ、パンフレット、事業所に認証マークを表示できるとともに、業界団体での広報にも活用できる。

多くの求職者が閲覧するハローワークの求人票に認証取得を記載できるようにする。加えて、民間の人材募集サイト運営会社に対しても認証の狙いについて周知を図り、認証取得を求人企業紹介に記載してもらうよう働きかける。認証の審査手数料についても、実施団体が適正な料金設定を行う。
認証実施団体はトラック、バス、タクシーの各モードの事業者を審査し、年度内をメドに認証を付与する。実施団体は公募によって決定するが、営利を目的としない民間の中立的団体で、認証・認定制度の運営実績があることや労働環境などに関係する法令などへの知見を有することが要件となる。

実施団体の決定後は、同団体が中心となり、トラック業界での「Gマーク」(=貨物自動車運送事業者安全性評価事業)や、バス業界の「セーフティバスマーク」(=貸切バス事業者安全性評価認定制度)のような親しみやすい愛称や、訴求力のある認証マークを決める。「Gマーク」や「セーフティバスマーク」は主に荷主や旅客向けに情報提供を行うのに対し、「働きやすさ認証」ではトラック、バス、タクシー業界を志望する求職者に向けて優良な労働環境の事業者を推奨することを目的とする。
(2019年2月5日号)


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