プラットフォーム構築に貢献=JILS/新年記者発表会
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の遠藤信博会長(日本電気会長)と渡邉健二副会長(日本通運会長)は10日に記者会見し、ロジスティクスの高度化に向けた情報プラットフォーム(PF)構築や人材育成について所感を述べた。遠藤会長は冒頭、企業活動と豊かな国民生活を実現するためのロジスティクスの重要性を訴え、ロジスティクスシステムの基盤となる情報プラットフォーム構築に向け、活動を展開する意欲を表明した。
会見の冒頭、挨拶に立った遠藤会長は「経済界では、より一層活性化し、効率的でスマートな社会『ソサエティ5・0』の実現を目指しているが、それを支えるものは企業の活動だ。価値創造や社会の継続性を担う企業活動は、地球の持続性を支える重要な役割も果たしている」と指摘。その上で「ロジスティクスシステムは企業活動と豊かな生活を支えているが、今後その果たすべき役割はより一層重要となり、社会の変化に対応し、さらなる進化が期待される」との認識を示した。今後のJILSの取り組みについては「会員企業や物流事業者へのサポート含め、ロジスティクスの進化を支える重要基盤としての活動を推進していく」と表明した。
記者会見の概要は次の通り。
――米中貿易摩擦や英国のEU離脱をはじめ、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(TPP11)や日EU経済連携協定(EPA)の発効など、大きく環境が変化していく国際物流において、ロジスティクスのシームレス化に向けた課題とは何か。
遠藤会長 TPP11やEPAの発効により国際物流の貨物量は大幅に増加するだろう。増大するボリュームを円滑にさばくためには、グローバルな情報の収集・共有化を進め、スムーズな物流を実現しなければならない。併せて、国際的なハブを活用した効率的輸送のあり方を検討し、企業間・国家間での円滑な連携を推進すべきだ。
国内においては、情報のプラットフォームの構築と、それをベースにした物流のPFを作り上げることが必要だ。近年、人間でなければできなかった多くのことをAIが担えるようになった。AIがその機能を十全に発揮するためには情報の共有化・標準化が前提となる。当協会としてもロジスティクスの高度化に向けた情報PF構築に貢献するため、積極的に活動していく。
――物流から見た最新技術の発展と人手不足を背景としたロジスティクス人材の育成についてどのように考えるか。
渡邉副会長 IoT、AIなど先進的技術を活用し、自動化・デジタル化や標準化を進めることが物流分野の生産性向上に資すると期待しているが、現状では個社の取り組みにとどまっている。データ形式やシステム仕様の標準化を実施し、オペレーションの前提となるユニットロード化等を進めなければ、個別企業の枠を超えて標準化・自動化・デジタル化をより一層加速することはできない。
この課題を克服するには、荷主、物流事業者、行政が連携して標準化に取り組む必要がある。当協会が音頭を取り、行政との連携をより一層図ることで物流生産性向上に貢献していく。
人材育成についてだが、当協会ではこれまでロジスティクス分野の高度人材育成に取り組んできた。ロジスティクス経営士をはじめ、物流現場改善士、物流技術管理士、国際物流管理士など各種の資格認定講座の開催を通じ、〝強い物流〟を実現する人材育成に注力していく。
――政府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)が推進する「スマート物流サービス」に対するJILSの関わり方と、19年のJILSの取り組み概要は。
橋爪茂久専務理事 SIPの「スマート物流サービス」プロジェクトの目指すところは、モノの流れと商品情報を「見える化」するとともに、物流・商流PFを開発・構築し、サプライチェーン全体の最適化・見える化を行い、全体の生産性を高めることだ。現在幅広い領域からプロジェクト実施主体の募るため再公募の準備が進められていると聞く。PFの構築には発着荷主・物流事業者間、あるいは企業間・企業内部の部門間での合意形成が必要となる。当協会のリソースを活用することでPF構築に貢献していきたい。
19年度の活動として、2つの展示会を開催する。ロジスティクスの課題解決のための情報発信・交流の場として「ロジスティクスソリューションフェア」を8月27~28日の2日間開催する。また、来年2月19~21日の3日間、国内外の最新物流機器をはじめ、システム・情報関連のハードとソフトが一同に結集する「国際物流総合展 INNOVATION EXPO」を開催する。また、物流業界に若い人材を呼び込むため、大学生・高専生を対象とした「ロジスティクス物流業界研究フォーラム」を今年2月に開催する。
さらに、当協会が広く社会に向けて提案している「ロジスティクスコンセプト2020」をヴァージョンアップするため、本年は総合的調査を実施する。その調査結果に基づき「ロジスティクスコンセプト2030」(仮称)を取りまとめ、来年1月に発表する。
(2019年1月17日号)